会社設立後の社会保険、届出が5日過ぎた・遅れたときに変わること・変わらないこと
この記事の目次(9項目)
この記事を読んでほしい人
会社設立をして役員報酬を払い始めたのに、社会保険の届出を5日以内に出せなかった社長に向けた記事です。数日から数週間ほど遅れてしまい、「加入日はどうなるのか」「保険料に何か上乗せがあるのか」「罰則はあるのか」を落ち着いて整理したい方のための記事です。
「5日以内」は何の期限なのか

会社設立後の社会保険の手続きでよく聞く「5日以内」は、日本年金機構の新規適用の手続きのページに「事実発生から5日以内」と書かれている提出時期のことです。この記事の「社会保険」は健康保険と厚生年金保険の2つを指し、40歳から64歳の人なら介護保険もセットです。
数え始めは「事実発生」です。法人の事業所は、事業主のみの場合を含めて常時従業員を使用するものが対象で、役員報酬を受ける社長がいれば社長1人でも当てはまります。一方、報酬を受けない社長だけの会社は、保険に入る本人がいないので、適用事業所には当たりません。そのため、5日の起点は会社設立の日とは限らず、報酬を受ける人が生じた日などになります。
この記事では、提出先・様式・添付書類といった届出の書き方そのものは扱いません。それは「会社設立後の手続き」のテーマの担当です。ここで扱うのは、5日を過ぎたときに、加入日・保険料・延滞金・罰則がどうなるかという「中身」の話です。
具体例として、36歳・東京都の社長を置きます。2026年8月末に会社員を辞め、9月1日に会社設立。9月分から役員報酬を月20万円とし、9月1日から適用事業所になることは年金事務所で確認できた、という前提です。手続きを後回しにしていて、10月10日に届出をしていないことに気づきました。5日の期限からは1か月以上過ぎています。
新規適用の手続き|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日
5日を過ぎても、加入日は本来の日から動かない

いちばん大事なのは、届出が遅れても加入日は後ろにずれない、という点です。資格を取る日について、健康保険法35条は「勤め先が適用事業所になった日」などを挙げていて、厚生年金保険法13条も同じ組み立てです。被保険者とは、健康保険・厚生年金保険に加入している本人のことです。
36歳の社長の場合、10月10日以降に届出をしても、加入日は9月1日のままです。「届け出た日から加入する」のであれば遅れた分だけ保険料が減りそうですが、そうはなりません。届出の遅れは、加入日を変えるものではなく、本来の加入日にさかのぼって手続きをすることになる、と理解しておくのが正確です。

加入日の考え方は、会社設立から報酬開始までの間が空いている会社ほど複雑になります。詳しくは加入日についてのカテゴリーで整理しています。
Q. 届出が遅れたぶん、加入日を後ろにしてもらうことはできる?
A. 加入日は、適用事業所となった日などの事実で決まるもので、届出の日で選べるものではありません。報酬を払っていた期間があれば、その期間は社会保険の被保険者だったことになります。
Q. 5日の数え方は、土日や祝日を除く?
A. 日本年金機構のページは「事実発生から5日以内」とだけ書いています。休日の扱いなど細かな点は、管轄の年金事務所に確かめてください。
Q. 役員報酬の支払いを1か月遅らせれば、加入日も1か月遅くなる?
A. 報酬の対象となる期間や決め方によります。実態と合わない形で支払日だけを動かすことは勧めません。報酬の決め方そのものは会社設立後の手続きのテーマで扱っています。
健康保険法 第35条(資格取得の時期)|e-Gov法令検索デジタル庁 e-Gov/確認日 2026年10月11日
資格は「確認」で効力を生じる:届出のほか職権でも

もう少し条文に踏み込みます。健康保険法39条は、被保険者の資格の取得と喪失は保険者等の「確認によって、その効力を生ずる」とし、その確認は事業主の届出、被保険者本人の請求、または職権で行うと定めています。厚生年金保険法18条も同じ仕組みです。
つまり、事業主の届出は確認のきっかけの1つです。届出が遅れても、確認される内容は「いつから被保険者だったか」という事実なので、加入日がさかのぼるのは自然な結果です。日本年金機構も、要件に当てはまる事業所には早く届け出てほしいと呼びかけています。期限を過ぎたからといって届出をやめる理由にはならず、気づいた時点で出すのが基本です。
社長1人の会社では、被保険者は社長自身なので、本人の請求という入り口はあまり意味を持ちません。従業員を雇っている会社では、従業員が自分で確認を請求できることも覚えておくとよいでしょう(健康保険法51条)。
注意
5日を過ぎた届出に、理由を書いた書面などが求められるかどうかは、日本年金機構の公開ページでは確認できませんでした。必要なものは、管轄の年金事務所に問い合わせてください。
健康保険法 第39条(資格の得喪の確認)|e-Gov法令検索e-Gov法令検索(デジタル庁)/確認日 2026年10月11日
保険料は加入した月の分から:9月分から納める

加入日が9月1日なら、社会保険料も9月分から始まります。日本年金機構によると、保険料の納付期限は納付対象月の翌月末日です。本来の流れなら9月分の期限は10月の末日ですが、届出が遅れると、最初の納入告知書が届く時期もずれ、9月分と10月分を近い時期にあわせて納めることになり得ます。
金額を確かめておきます。計算の条件は、東京都の協会けんぽ・令和8年度の料率・社長36歳(介護保険の対象外)・役員報酬月20万円です。標準報酬月額は、報酬をいくつかの段に区切ったときの段の金額で、保険料はこれに率を掛けて出します。報酬月額19万5千円以上21万円未満が20万円の等級になります。
| 項目 | 率 | 社長の負担 | 会社の負担 |
|---|---|---|---|
| 健康保険(36歳・介護なし) | 9.85% | 9,850円 | 9,850円 |
| 支援金 | 0.23% | 230円 | 230円 |
| 厚生年金 | 18.300% | 18,300円 | 18,300円 |
| 拠出金(会社のみ) | 0.36% | なし | 720円 |
| 計 | 28,380円 | 29,100円 |
会社と本人を合わせて1か月5万7,480円、9月分と10月分の2か月なら11万4,960円です。届出の遅れによって保険料そのものが割り増しになるわけではありませんが、まとまった額を一度に用意する必要が出てくる点は、会社設立直後の資金繰りでは見落とせません。率の掛け方は保険料の計算カテゴリーで順を追って説明しています。
40歳以上の社長なら、ここに介護保険料(労使合計1.62%)が加わります。同じ月20万円の報酬で、40〜64歳なら本人負担・会社負担それぞれ1,620円増える計算です。年齢によって負担が変わるので、会社設立のときに年齢と報酬額をセットで確かめておくと、遅れた分をまとめて納めるときの資金の見通しも立てやすくなります。
納付期限|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日
延滞金は「届出の遅れ」ではなく「納付の遅れ」にかかる

「5日を過ぎたら延滞金がかかるのでは」という心配もよく聞きます。条文を読むと、延滞金は届出の遅れに対するものではありません。厚生年金保険法87条の延滞金は、保険料を督促されて、指定された期限までに納めなかった場合に、納期限の翌日からの日数に応じて計算されるものです。
割合は、条文の上では年14.6%で、ただし最初の3か月の部分は年7.3%です。日本年金機構の延滞金のページによると、実際には、3か月までは年7.3%と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合、それ以降は年14.6%と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合が使われます。
延滞金の対象ではない。加入日はさかのぼり、保険料は加入月から
督促状の指定期限を過ぎると、延滞金の対象になり得る
36歳の社長の場合、届出が遅れたこと自体で延滞金が生じるわけではありませんが、届出のあとに届く納入告知書の期限を守らなければ、督促と延滞金の流れに入ります。届出の遅れと納付の遅れを重ねないことが大切です。
厚生年金保険法 第87条(延滞金)|e-Gov法令検索e-Gov法令検索(デジタル庁)/確認日 2026年10月11日
国民健康保険との重なりは、脱退の届出で整理する

36歳の社長は、8月末に会社を辞めたあと、9月から国民健康保険に入っていたとします。会社の社会保険の加入日が9月1日になると、9月以降は会社の健康保険の加入者だったことになり、国保の資格は同じ日にさかのぼってなくなります。国保料も、加入した月の分からはかかりません。
ただし、国保は、会社の健康保険に入っても自動的には抜けられません。世田谷区の案内では、勤め先の健康保険に入ったときの国保の届出は14日以内とされ、放っておくと国保料の請求が止まらず督促状などが届くこと、さらに国民健康保険法110条の2の規定で保険料を変更できる期間が決まっていて、それを過ぎると払い過ぎた保険料が戻らない場合があることを書いています。
会社の社会保険の届出が遅れると、協会けんぽの資格を確かめられるようになる時期も後ろにずれ、そのぶん国保の脱退手続きも後ろにずれがちです。その間に国保の資格確認書で受診すると、あとで国保が負担した分の返還を求められることもあります。会社の届出が済んだら、すぐに国保の側の手続きに移るのが安全です。国保料を口座振替にしている場合は、脱退の届出をするまで引き落としが続くこともあるので、通帳の動きも確認しておきましょう。国民年金のほうは、会社の社会保険の手続きが反映されれば第1号ではなくなり、納め過ぎた分は日本年金機構の通知に従って還付を受ける流れです。国保と会社の健康保険の比較は個人事業主・国民健康保険からの切り替えでも扱っています。
国民健康保険脱退の届出|世田谷区公式ホームページ世田谷区/確認日 2026年10月11日
条文上の罰則は「正当な理由がなくて」届出をしない場合

罰則も条文で確かめます。健康保険法208条の文言は、事業主が「正当な理由がなくて」48条の届出をしない、あるいは偽りの届出をするといった場合を挙げ、6か月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金としています。厚生年金保険法102条も、同法27条の届出について同じ重さの罰則を置いています。
条文が対象にしているのは「正当な理由がなくて届出をしない」ことです。5日を1日でも過ぎれば直ちに罰則が科される、という書き方にはなっていません。一方で、条文上の罰則が存在することも事実なので、遅れに気づいたら放置しないことが何より大切です。日本年金機構の説明では、自分から加入しない事業所に対しては加入指導、それでも手続きをしない場合は立入検査と職員の認定による加入、という段階が示されています。

健康保険法 第208条(罰則)|e-Gov法令検索e-Gov法令検索(デジタル庁)/確認日 2026年10月11日
遅れた届出を自分で出すか、社労士に頼むか

期限を過ぎた届出を自分で出すか、社会保険労務士に依頼するかは、会社設立直後の社長が迷うところです。書類の作成や提出の代行は社会保険労務士の業務で、このサイトは代行をしていません。全国社会保険労務士会連合会は、相談窓口や都道府県の社労士会を探す方法を案内しています。
期限を過ぎた届出は、通常の届出と比べて確認される事実が多くなりがちです。どちらを選ぶにしても、事前に整理しておくと話が早い事実があります。会社設立の日、役員報酬を決めた日と最初に支払った日、従業員の有無と雇った日、社長が今入っている健康保険(国保・任意継続・家族の扶養)です。これらがそろっていれば、加入日の確認とその後の手続きの見通しを立てやすくなります。役員報酬の支払いが分かる通帳の記録や、報酬を決めた議事録なども、手元にまとめておくと説明がしやすくなります。
自分でやるか社労士に頼むかの判断材料と費用の考え方は、手続きは自分で?社労士?費用にまとめています。
社労士に相談する|全国社会保険労務士会連合会全国社会保険労務士会連合会/確認日 2026年10月11日
まとめ:5日を過ぎても「加入日」と「保険料」は変わらない

会社設立後の社会保険の届出が5日を過ぎても、加入日は適用事業所となった本来の日のままで、保険料もその月の分からかかります。延滞金は届出の遅れではなく納付の遅れに対する定めで、罰則の条文は「正当な理由がなくて」届出をしない場合を対象にしています。
| 項目 | 5日を過ぎた場合 |
|---|---|
| 加入日 | 変わらない(適用事業所となった日など) |
| 保険料 | 加入した月の分から。まとめて納めることになり得る |
| 延滞金 | 届出の遅れには生じない。督促の期限を過ぎた納付の遅れが対象 |
| 国民健康保険 | 加入日にさかのぼって不要に。脱退の届出は自分で |
| 罰則(条文) | 正当な理由なく届出をしない場合など。条文上は拘禁刑(6か月以下)か罰金(50万円以下) |
遅れが数か月から年単位になっている場合の考え方は、社会保険の届出が遅れた期間別の早見で扱います。役員1人だけの会社がそもそも加入するのかはひとり社長の加入義務の解説にあります。加入の届出そのものの流れは、日本年金機構の被保険者資格取得届のページも参考になります。
就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日
最後に、読んでくださったあなたへ
会社設立の直後は、登記、口座、税務署と、やることが次々に押し寄せます。社会保険の届出が5日を過ぎてしまったのは、決して珍しいことではありません。大事なのは、加入日は戻らないと知ったうえで、気づいた今日から動くことです。設立した日と最初の報酬の日付を書き出して、年金事務所か社会保険労務士に相談してみてください。
この記事は役に立ちましたか? 41人が「役に立った」と答えています


