会社設立の社会保険、加入するのはどんなとき?条件の早見表と判定の順番
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会社設立を終えた(これから終える)社長や役員、そして従業員を迎える準備をしている方に向けた、加入の入口になるページです。社会保険に入るのか入らないのか、入るなら誰が対象なのかを、立場ごとの早見表で先に確かめ、細かい論点は子記事へ進めるように組んでいます。
加入義務は社長1人の会社にもあるのか:法人か、報酬が出ているかで決まる

会社設立をした直後、いちばん多く聞く疑問が「従業員がいないのだから、社会保険は関係ないのでは」というものです。日本年金機構の説明は明快で、健康保険と厚生年金保険の加入が法律で義務づけられているのは、法人事業所で常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用するところ、とされています。つまり法人であれば、社長だけの会社も対象です。
ここでいう社会保険は、健康保険と厚生年金保険のことです(40〜64歳は介護保険を含みます)。労災保険と雇用保険は労働保険といって別の制度ですから、混ぜずに読み進めてください。また、適用事業所は加入が義務づけられた事業所、被保険者は保険に加入する本人を指します。
個人事業のころと比べると、立場が逆転します。個人事業は常時5人以上の従業員がいても事業主本人は被保険者にならず、法人になると社長自身が、法人から報酬を受ける人として被保険者になります。この仕組みと例外(無報酬・70歳以上)は社長1人の会社でも社会保険に加入する?に一次情報つきでまとめています。
事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
加入条件の早見表:社長1人・無報酬の役員・家族・会社員・パート・合同会社

このカテゴリーの中心になる表です。立場ごとに、会社の社会保険へ加入するか、条件がどこにあるか、詳しく読む記事を並べました。自分に近い行を1つ選び、そこだけを先に読んでください。
| 立場 | 加入するか | 判定の分かれ目 | 次に読む |
|---|---|---|---|
| 社長1人(法人・報酬あり) | 加入する | 法人から労務の対償として報酬を受けている | 5つのケースで当てはめる |
| 役員報酬ゼロの社長・役員だけ | 加入しない | 被保険者となる者がおらず、適用事業所の要件を満たさない | 入らない・未加入 |
| 報酬を受ける妻・子などの役員 | 報酬と実態で決まる | 経営への参画を内容とする労務の提供か、報酬が経常的か | 妻を役員にしたとき |
| 扶養される家族 | 自分は加入せず被扶養者に | 年間収入130万円未満など。同居なら被保険者の収入の半分未満 | 家族の扶養の範囲 |
| 会社員のまま自社の役員も兼ねる | 両方で要件を満たせば二以上事業所勤務 | どちらの事業所でも加入要件を満たすか | 会社員のまま設立 |
| パート・アルバイト | 条件を満たせば加入 | 所定労働時間・日数が4分の3以上、または週20時間以上かつ学生でない(特定適用事業所等) | パートの加入条件表 |
| 合同会社の業務執行社員 | 報酬があれば加入 | 法人から報酬を受けている限り被保険者として扱われる | 合同会社の役員 |
| 70歳以上の社長 | 健康保険のみ(75歳まで) | 厚生年金保険の被保険者は70歳未満 | 年金と70歳 |

表の「加入しない」は、会社が適用事業所の要件を満たさない場合の話で、役員報酬をわざと下げて外れる方法を勧めるものではありません。日本年金機構は、無報酬の役員しかいない法人は適用を受けることができない、と書いています。報酬額の水準は事業の資金計画と将来の年金額も合わせて考えるものです。
健康保険・厚生年金保険 新規加入に必要な書類一覧|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
家族・妻・子を役員や従業員にするとき:加入と扶養を分けて考える

家族が関わる会社設立で迷いやすいのは、「入る」と「扶養に入る」を同じものとして扱ってしまうことです。会社から報酬を受ける家族は、自分が被保険者になるかを判定します。報酬を受けず、生計を社長に頼っている家族は、被扶養者になれるかを判定します。判定の物差しが別なので、一度に考えると混乱します。
被扶養者の基本は、日本年金機構の示す収入要件です。年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)で、同居なら被保険者の収入の半分未満であることが目安になります。令和8年4月1日以降は、労働条件通知書などに書かれた賃金から見込まれる年間収入で判定する取扱いも始まっています。ただし、個別の事情で扱いが変わるため、断定はできません。
- 報酬を払う妻・子を役員にする:役員としての実態(経営への参画)と報酬の経常性で、被保険者かどうかを判断する。妻を役員にした場合
- 親や子を役員か従業員にする:役員と従業員で見られる点が違う。家族ごとの加入の分かれ目
- 報酬を払わず養う:被扶養者の範囲と収入の線を確かめる。社長の家族は扶養に入れるか
- 家族がパートで働く:勤め先の社会保険と扶養の判定を別々に確かめる。パートの契約収入と扶養判定
たとえば、社長(45歳)が役員報酬で月30万円を受け、妻が会社の事務を週に数日手伝うものの報酬は出していない場合、妻の年間収入は0円で、扶養の収入要件は満たします。一方、妻に月8万円を払うと年間収入は96万円になり、130万円未満という線は超えませんが、役員として経営に関わるのかどうかで加入の判断が変わります。このように、金額だけでなく働き方で決まる点がこの論点の難しさです。
注意
家族を役員にするかどうかの経営判断や、役員報酬の決め方による節税は、「節税・会社員の会社設立」のテーマのテーマです。このカテゴリーでは、加入と扶養の判定までを扱います。
従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
会社員のまま・副業で会社設立:本業と自社の二つで加入が重なるとき

会社員を続けながら会社設立をした人は、本業の勤め先で社会保険に入っています。ここに自分の会社からも役員報酬を受けると、2つの事業所の両方で加入要件を満たすことがあります。このとき日本年金機構は、いずれか1つの事業所を選択して管轄の年金事務所などを決める必要がある、と案内しています。
届出の期限は、事実が生じてから10日以内で、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。保険料は、2つの事業所の報酬月額を合算して標準報酬月額を決め、それぞれの報酬額で按分します。日本年金機構のリーフレットには、A社200,000円・B社100,000円の例で、厚生年金保険料のうち本人負担27,450円をA社18,300円・B社9,150円に分ける計算が載っています。

副業として会社をつくったことが勤め先に知られるのかどうかも、よく聞かれる点です。社会保険の適用は事業所ごとに判断される一方、按分した保険料の仕組みに絡んで、勤め先に情報が届く場面があるかどうかが論点です。詳しくは副業で会社設立した会社員の社会保険で扱っています。在職中の加入の判定は会社員のまま会社設立したらへ。
加入したあとの運用、つまり報酬を変えたときや賞与を払ったとき、役員を退くときに保険料と按分がどう動くかは二以上事業所勤務になった後に、2社から報酬を受ける場合の按分の具体例は按分と保険料の例にまとめています。
兼業・副業等により2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ(リーフレット)|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
従業員・パートを雇ったとき:4分の3基準と適用拡大の年表

社長1人の会社が従業員を迎えると、加入の判定の対象は一気に増えます。正社員は原則として加入しますが、問題はパートとアルバイトです。日本年金機構の基本は、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に就く通常の労働者の4分の3以上であること、というものです。
これに加えて、特定適用事業所(現在は被保険者が51人以上)などでは、4分の3未満でも週の所定労働時間が20時間以上で学生でなければ加入の対象になります。小さな会社には関係なさそうに見えますが、この規模の要件は段階的に下がります。厚生労働省は令和9(2027)年10月から36人以上、その後も令和11(2029)年、令和14(2032)年、令和17(2035)年の各10月から順に小さくなる年表を示しています。月額8.8万円以上という賃金要件は、2026年10月に撤廃されました。
| 時期 | 従業員数の目安 | 週20時間以上の短時間労働者の扱い |
|---|---|---|
| 現在(2026年10月) | 51人以上 | 加入の対象(賃金要件は撤廃済み) |
| 2027年10月から | 36人以上 | 加入の対象 |
| 2029年10月から | 21人以上 | 加入の対象 |
| 2032年10月から | 11人以上 | 加入の対象 |
| 2035年10月から | 10人以下 | 加入の対象 |
従業員が少ない会社でも、従業員の2分の1以上の同意があれば、短時間労働者を任意で加入させることができる、と厚生労働省は案内しています。年表の細部は適用拡大の企業規模と年表に、パートごとの判定は加入条件を表で判定に書きました。従業員を雇うと会社の負担がいくら増えるかは、社会保険料はいくら?へ。
適用事業所と被保険者|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
合同会社の場合:業務執行社員も、報酬があれば加入する

株式会社でなく合同会社をつくった場合の社会保険はどうなのか。結論は、法人であることは同じなので、加入の考え方も同じです。社会保険審査会の裁決例には、法人の代表者または業務執行者であっても、法人から労務の対価として報酬を受けている限り、法人に使用される者として被保険者になる、と示した記述があります。合同会社の業務執行社員も、この考え方で扱われた事例です。
違いは、出資と労務の関係にあります。合同会社の社員は、出資をしただけでは報酬を受けるとは限りません。会社法は、定款に別段の定めがなければ社員が業務を執行すると定めています。出資のみで業務に関わらない社員、報酬を受けない社員、夫婦で2人の社員になっている場合などは、株式会社の役員とは別の整理が必要です。
業務執行社員で報酬あり
法人から労務の対価として報酬を受けているので、被保険者として扱われる。標準報酬月額に応じた保険料がかかる。
報酬のない社員だけの合同会社
被保険者となる者がいなければ、適用事業所の要件を満たさない。国保・国民年金で過ごす期間が生じる。
2人以上で設立する場合の整理は2人以上で合同会社をつくるときの社会保険、業務執行社員1人あたりの扱いは合同会社の役員(業務執行社員)も加入する?で、株式会社との違いまで詳しく書いています。合同会社の設立そのものの手順は「合同会社を自分でつくる」のテーマのテーマです。
社会保険審査会 裁決(令和3年(健厚)第458号)|厚生労働省厚生労働省(社会保険審査会)/確認日 2026年10月23日
加入先はどこになるのか:協会けんぽと健康保険組合の見分け方

社会保険に加入すると決まったら、次に気になるのが加入先です。健康保険法は、保険者を全国健康保険協会と健康保険組合の二つと定め、協会は健康保険組合の組合員でない被保険者の保険を管掌する、としています。ふつうの新設会社は、組合員になる前提がないので、協会けんぽに加入します。保険料率は協会けんぽなら本店の所在地の都道府県ごとに決まります。
健康保険組合への道は、大きく2つあります。ひとつは自社で組合をつくる方法で、政令は単独の設立に被保険者700人以上、共同の設立に3,000人以上を求めています。小さな会社が現実的に選べるものではありません。もうひとつは、既存の総合型組合に会社が加入する方法です。ある総合型組合の加入基準には、社会保険の加入期間が1年以上あり協会けんぽに加入していること、被保険者数が20名以上であること、認可まで約6か月を要すること、といった条件が書かれています。設立直後には使いにくい道です。
| 項目 | 協会けんぽ | 健康保険組合 |
|---|---|---|
| 設立直後の会社 | 原則ここに加入する | 条件を満たすまで入れない(組合ごとに基準が違う) |
| 保険料率 | 本店の所在地の都道府県ごと | 組合ごとに決める |
| 書類の窓口 | 年金事務所(事務センター)に届出 | 組合の案内に従う(組合への届出が必要なことがある) |
| 見直しの考え方 | 従業員が増えても、そのまま続けられる | 組合へ移る条件と手続きを確認する |
協会けんぽから組合へ移る条件の詳細は会社設立したら協会けんぽ?健康保険組合?に、都道府県で率がどう変わるかは保険料の金額のカテゴリーにあります。なお、保険証にあたる書類がいつ届くかは、保険証はいつ届く?で扱っています。
健康保険法 第4条・第5条(保険者・協会管掌健康保険)|e-Gov法令検索デジタル庁(e-Gov)/確認日 2026年10月23日
加入方法と加入日の流れ:5日以内に届出。細かい書き方は別のテーマへ

加入すると決まったとき、実際の作業は、事業所として加入する新規適用届と、社長自身の被保険者資格取得届の二つが中心です。日本年金機構は、新規適用届の提出時期を事実発生から5日以内、提出先を事務センターまたは管轄の年金事務所としています。被保険者資格取得届も、提出時期は同じ5日以内です。
加入日は、健康保険法第35条が定めるとおり、被保険者が適用事業所に使用されるに至った日(またはその事業所が適用事業所となった日)です。届出を出した日ではないので、報酬の支払いを始める日と登記日のどちらが事実発生日になるかは、事前に確認しておくと慌てません。ここから先の論点は、それぞれ専用のカテゴリーに任せます。

- 加入日の決まり方や、退職から設立までのすき間:社会保険はいつから?
- 届出の期限が過ぎたとき:いつまでに出す?
- 届出の流れと提出先:加入手続き
- 自分で行うか社会保険労務士に頼むか:自分で手続きする?
注意
書類の作成と提出の代行は社会保険労務士の業務で、当サイトは代行を行いません。
新規適用の手続き|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
まとめ:加入の早見表は「法人・報酬・年齢・立場」の4つで当てはめる

ここまでの内容を、加入の判断が必要になった順番でもう一度整理します。法人であれば、社長1人でも、報酬を受ける人がいる会社は適用事業所です。報酬を受ける人がいなければ、適用を受けられません。厚生年金保険は70歳未満が対象で、健康保険は75歳になるまで加入します。

判定の結果、加入するとなったら、届出は事実発生から5日以内です。保険料の金額は社会保険料はいくら?で、役員報酬との関係は役員報酬と標準報酬月額で確かめられます。たとえば東京都・協会けんぽ・令和8年度で、標準報酬月額が20万円の40歳未満の本人負担は、健康保険料9,850円、子ども・子育て支援金230円、厚生年金保険料18,300円で、合計28,380円です。
表で当てはめても迷いが残る場合は、状況を紙に書いて管轄の年金事務所か社会保険労務士に見せるのが近道です。制度は変わりますから、最新の取扱いは日本年金機構と全国健康保険協会で確かめてください。
厚生年金保険法 第9条(被保険者)|e-Gov法令検索e-Gov法令検索(デジタル庁)/確認日 2026年10月23日
最後に、読んでくださったあなたへ
加入の条件は、一見ややこしく見えても、法人かどうか、報酬が出ているか、年齢はいくつか、どんな立場かという4つの問いに分けると、答えが見えてきます。会社設立のあとは決めることが山ほどありますが、社会保険は自分で選べる制度ではなく、条件に当てはまれば入る制度です。だからこそ、早見表で自分の立場を確かめ、次に読む記事へ進んでください。判断に迷う事情があれば、年金事務所や社会保険労務士に、この表を見せながら相談してみましょう。