会社設立の社会保険の支払いは?いつから・初回の納付月・方法・見直し時期を月順に整理
この記事の目次(9項目)
会社設立と社会保険の加入を終えて、「いつから払うのか」「最初の支払いはいつか」「どの方法で納めて、本人の分はいつ差し引くのか」を、月の流れのなかで確かめたい社長に向けた入口の記事です。細かい判定は子記事に譲り、全体の順序と、迷いやすい分かれ目をここで見渡せるようにしています。
会社設立の社会保険の支払い:誰が・どこへ・いつまでに

会社設立のあとで社会保険の支払いを考えるとき、押さえるのは3点です。誰が納めるのか、どこへ納めるのか、いつまでに納めるのか。この3点が分かれば、残りは個別の月の話になります。
日本年金機構の案内によると、健康保険・厚生年金保険の保険料の徴収は日本年金機構(年金事務所)が行い、事業主は毎月の給料と賞与から被保険者負担分の保険料を差し引いて、事業主負担分とあわせて、納付期限までに納めます。期限は納付対象月の翌月末日で、末日が休日にあたれば、その後の最初の営業日にずれます。協会けんぽに加入している会社でも、納付先は同じ年金事務所です。
| 問い | 答え | 根拠 |
|---|---|---|
| 誰が納める? | 事業主(会社)。本人負担分も会社がまとめて納める | 日本年金機構、健康保険法第161条 |
| どこへ納める? | 日本年金機構(年金事務所)。窓口・口座振替・電子納付 | 日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」 |
| いつまでに? | 納付対象月の翌月末日(休日なら翌営業日) | 健康保険法第164条、厚生年金保険法第83条 |
| 本人分はいつ差し引く? | 当月の報酬から前月分を差し引ける | 健康保険法第167条 |
納付期限までに納めなかったときは、督促状が届き、延滞金がかかります。延滞金の割合は年ごとに公表され、令和8年は、3か月までが年2.8%、それを過ぎると年9.1%です。事実としてはここまでです。ただ、会社設立の直後は資金に余裕がないので、期限を先に知っておくことに意味があります。
注意
労災保険・雇用保険の労働保険料は、社会保険料とは別の仕組みで、納める時期も窓口も異なります。違いは社会保険と労働保険の違いに整理しています。
厚生年金保険料等の納付|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
いつから支払いが始まる?加入した月の分から、月単位で

支払いがいつから始まるのかは、加入した日ではなく、加入した月で決まります。厚生年金保険法第19条は、被保険者期間を月で数え、資格を取得した月から資格を喪失した月の前月までを算入すると定めています。取得した月に喪失した場合も、その月は1か月として数えます。
ですから、会社設立の登記が月の10日でも、月の30日でも、加入したその月の分の保険料が1か月分発生します。日割りで安くなることはありません。逆に、月の途中で加入した月の前の月は、保険料の対象になりません。この月単位の考え方は、資格を喪失する月の側にも使われます。

月単位の発生と、実際にお金を払う月は別のものです。払うのは翌月末日で、そのまた前に本人負担を差し引く月がきます。この3つの月の関係は、次の節の表で並べます。加入日そのものの決まり方は社会保険はいつから?のカテゴリーで掘り下げています。
厚生年金保険法 第19条(被保険者期間)|e-Gov法令検索デジタル庁 e-Gov/確認日 2026年10月23日
初回の納付月:加入した月と、実際に払う月のずれ

最初の納付がいつになるかは、「加入月+1か月」の月末が目安ですが、休日があると日付が動きます。日本年金機構が令和8年度下期について載せている表をもとに、加入月から納付期限までを並べました。
| 加入した月 | 最初の納付期限 | 日付が動く理由 |
|---|---|---|
| 9月 | 11月2日 | 10月31日が土曜日で、翌営業日にずれる |
| 10月 | 11月30日 | 月末が月曜日のため、そのまま |
| 11月 | 1月4日 | 年末年始の休日をはさむ |
| 12月 | 2月1日 | 1月31日が日曜日で、翌営業日にずれる |
具体例で追います。33歳のNさんは、東京都の会社を11月5日に法人化し、その日から役員報酬月30万円で加入しました。条件は令和8年度、東京都、協会けんぽ、標準報酬月額30万円で、月額は本人42,570円、会社43,650円(拠出金を含む)、合計86,220円です。11月分の合計86,220円を、翌年1月4日までに納めることになります。

11月に加入すれば、最初の納付が1月までずれ込みます。このため、会社設立の直後は支払いが先の話に感じられ、気づいたときには2か月分が重なっている、という場面が起こりえます。初回の流れをさらに詳しく見たい方は、初回の社会保険料はいつ・いくら払う?を読んでください。
納付期限|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
支払い方法の選び方:納付書・口座振替・電子納付

社会保険料の納め方は3つあります。金融機関の窓口で納入告知書を出す方法、口座振替、Pay-easyなどの電子納付です。最初の納付期限までに時間が少ないときは、準備の要らない窓口払いで始めるのが現実的です。落ち着いてから、口座振替の申出書を出せば足ります。

口座振替には、口座名義や申出書の記入、金融機関の確認といった手順があります。新規適用時に申請する場合の記入の扱いや、提出の時期によって振替開始月が希望どおりにならない場合があることなど、つまずきやすい点は社会保険料の支払い方法の記事に1つずつ書いています。クレジットカードで払う方法は、日本年金機構の案内には載っていません。
窓口払い・電子納付
申込みを待たずに始められる。ただし毎月、窓口へ出向くか、電子納付の準備が必要になる。
口座振替
納め忘れが起きにくい。ただし申出書の提出が先で、開始月が希望どおりにならないことがある。
どの方法でも、納付期限の日が動くわけではありません。口座振替でも、振替日は納付期限日です。期限日の資金繰りは、納め方にかかわらず会社の仕事として残ります。
ケース3:健康保険料・厚生年金保険料を口座振替によって納付したいとき|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
給与から差し引く:本人負担を天引きできる月と、できない月

社長1人の会社でも、本人負担分を役員報酬から差し引く扱いを決めておくことは大切です。差し引くことで、会社の口座に納付の元手が残ります。法律(健康保険法第167条)は、通貨で報酬を払う事業主が、前月の標準報酬月額にかかる本人負担の保険料を、その報酬から引いてよいとしています。日本年金機構の例示も、5月の給料支払日には4月分の保険料を差し引く例を挙げています。
ここで見落とされやすいのは、加入した月の報酬からは差し引けないことです。Nさんの場合、11月20日の報酬からは前月(10月)分を差し引くことになり、10月はまだ加入していないため差し引く保険料がありません。11月分は12月20日の報酬から差し引きます。
| 報酬の支払い月 | 差し引ける保険料 | Nさんの例(本人負担) |
|---|---|---|
| 11月(加入した月) | なし(前月分がない) | 0円 |
| 12月 | 11月分 | 42,570円 |
| 1月 | 12月分 | 42,570円 |
- 役員報酬を差し引かずに、会社がいったん全額を払ってもよい?
- 差し引くことは「できる」と法律に書かれているだけで、義務ではありません。会社が先に全額を払う形も禁じられてはいません。ただ、社長1人の会社では、いずれも同じ会社のお金の動きになります。
- 報酬を払わない月は?
- 役員報酬がない月は、差し引く元の報酬がありません。報酬がゼロの間は社会保険に加入しないこともあるので、まず加入の要否を会社設立と社会保険の加入で確かめます。
退職月の扱いなど例外は、条文のかっこ書きにあります。使用されなくなった場合は、前月とその月の標準報酬月額に係る保険料を差し引ける、という内容です。社長1人の会社では出番の少ない話ですが、従業員を雇うと必要になります。
健康保険法 第167条(保険料の源泉控除)|e-Gov法令検索デジタル庁 e-Gov/確認日 2026年10月23日
告知額が見込みとずれる理由を、症状から見分ける

最初の納入告知書が届いて、自分で計算した額と違うと感じることがあります。慌てて年金事務所に電話する前に、症状から原因を絞れます。納入告知書の金額は、事業主が出した資格取得や標準報酬月額、賞与支払などの届出をもとに、毎月10日ごろに前月分を確定し、20日ごろに通知されます。つまり、届け出た内容が出発点です。
| 症状 | 疑うところ | 確かめること |
|---|---|---|
| 予想より1か月分多い | 月末の加入でも1か月分になる月単位の計算 | 加入した日と、資格取得月 |
| 数か月分まとめて請求された | 届出が遅れて、さかのぼって手続きされた | 届出の日と、資格取得日の差 |
| 予想より数千円多い/少ない | 40歳以上の介護保険料、都道府県の料率 | 年齢と、所属する支部の額表 |
| 特定の月だけ大きい | 賞与を支払った月の翌月の告知 | 賞与の支給月 |
| 報酬を変えたのに変わらない | 標準報酬月額の改定は時間差がある | 報酬を変えた月と、改定の時期 |
| 1円だけ合わない | 端数の処理(個別の合計から切り捨て) | 本人負担の円未満の扱い |
表の最後にある端数は、額表の注記に書かれています。納入告知書の保険料額は、被保険者個々の保険料額を合算した金額で、合算額に円未満の端数があるときは切り捨てた額になります。本人負担を給与から控除するときの50銭の扱いとは、別の話です。
6つの理由の1つずつを、数字つきで確かめたい方は初回の告知額がずれる6つの理由をご覧ください。ずれの原因が上の6つに当てはまらないときは、管轄の年金事務所に、届出の内容と告知書を見せて確認するのが確実です。
納付期限|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
算定基礎・月額変更で見直される時期と、支払い額の変わり目

保険料が決まる土台の標準報酬月額は、決まったあとも見直されます。会社設立の1年目は、この見直しに最初にぶつかる時期でもあります。見直しの仕組みは2つです。
定時決定(算定基礎)
事業主が、7月1日現在で使用している全被保険者の4月・5月・6月の報酬月額を算定基礎届で届け出る(毎年7月10日まで)。決め直された標準報酬月額は、9月から翌年8月まで使われる。
随時改定(月額変更)
固定的賃金が変わり、変動月から続く3か月の報酬の平均で出した標準報酬月額と、従前の標準報酬月額に2等級以上の差が出たとき。変動後の報酬を初めて受けた月から4か月目に改定される。
設立の直後に資格を取得したときに決まる標準報酬月額は、資格を取得した月からその年の8月までの各月に適用されます。6月1日から12月31日までの間に資格を取得した場合は、翌年の8月までです。Nさんのように11月に加入した会社は、そのまま翌年8月分まで同じ標準報酬月額が続き、翌年7月の算定基礎届を経て、9月分から見直しを受けます。

この見直しで報酬を大きく動かしていなければ、支払い額は変わりません。見直しの要件や年のカレンダーは算定基礎と月額変更による見直しに、保険料が動く5つのきっかけは社会保険料が変わるきっかけに整理しています。役員報酬の等級の読み方は役員報酬と標準報酬月額へ続きます。
定時決定(算定基礎届)|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
賞与を払った月の支払い:翌月の告知書に合算される

賞与を払う月は、支払いがひと山増えます。賞与の保険料は別立てではありません。日本年金機構によれば、賞与を払った月の翌月に届く告知書に、毎月の分と一緒に載ります(口座振替なら通知書)。納めるのは月末までで、本人分はその賞与から差し引けます。
賞与を支給した日から5日以内に、賞与支払届を届け出る必要があります。賞与の予定月に支払いがなかったときは、賞与支払届にかえて賞与不支給報告書を出します。届出の書き方は、会社設立後の手続きのテーマで扱う領域なので、ここでは割愛します。
数字を置いてみます。Nさん(33歳・東京都・令和8年度)が12月に賞与60万円を払ったとします。標準賞与額は60万円で、料率の合計28.38%を掛けた170,280円が会社と本人の合計です。本人負担は85,140円、会社負担は85,140円に拠出金2,160円を加えた87,300円。この172,440円が、翌年1月に届く告知書で12月分の毎月の保険料と合算され、納付期限は2月1日(月)です。
| 項目 | 金額 | いつ |
|---|---|---|
| 賞与の支給(12月) | 60万円 | 本人分の85,140円を、賞与から差し引ける |
| 賞与支払届 | 標準賞与額 60万円 | 支給日から5日以内 |
| 賞与分の保険料 | 172,440円(本人+会社) | 1月に届く告知書に合算。納付期限は2月1日(月) |
標準賞与額には上限があり、健康保険・介護保険・支援金は年度の累計573万円、厚生年金保険と拠出金は1か月150万円です。賞与が出る年は、翌月の告知額が普段より大きくなることを織り込んでおきましょう。金額の計算は会社設立の社会保険はいくら?のカテゴリーに戻ると確かめられます。
従業員に賞与を支給したときの手続き|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
まとめ:支払いは「加入月→報酬から天引き→翌月末日に納付」の順で見る

社会保険の支払いは、会社設立の直後から3つの月が前後して動きます。保険料が発生する月(加入した月)、本人負担を報酬から差し引く月(翌月)、納める月(発生月の翌月末日)。Nさんの例では、11月に発生した保険料を、12月の報酬から差し引き、1月4日に納めました。
- 加入した月から、月単位で保険料が発生する(日割りはない)
- 加入した月の報酬からは差し引けない。翌月の報酬から前月分を差し引く
- 納付は、発生した月の翌月末日。休日なら翌営業日
- 最初は窓口払いで始め、必要なら口座振替の申出書を出す
- 賞与の月は、翌月の告知書に賞与分が合算される
- 報酬を変えたり、秋の算定基礎があると、金額が動く
社会保険に加入するのか、いつから加入になるのかが決まっていない方は、会社設立と社会保険の加入と社会保険はいつから?から読むと、この記事の月の並びが使えるようになります。届出が遅れているときは社会保険はいつまでに?で整理しています。
制度や納付期限は年度ごとに変わります。この記事の日付は2026年10月23日に確かめた令和8年度下期のものです。最新の期限と方法は、日本年金機構と協会けんぽの公式ページで確認してください。書類の作成や提出の代行は社会保険労務士の業務で、当サイトは行いません。
厚生年金保険料等の納付|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
最後に、読んでくださったあなたへ
社会保険の支払いは、金額の大きさより「いつ出ていくか」が分かりにくい支出です。ただ、加入した月、報酬から差し引く月、納める月を並べて見れば、1年分のカレンダーがほぼ決まります。会社設立の直後に、この記事の月の並びを自分の会社の日付で書き直してみてください。手元の資金繰り表に納付期限が入るだけで、初めての支払いも、落ち着いて迎えられるはずです。