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会社設立の社会保険早わかり

社長1人・役員報酬ゼロ・在職中、ケース別に加入と保険料を確かめる

会社設立 社会保険 入らない

会社設立後に社会保険へ入らないとどうなる?未加入の会社に起きることを条文と年金機構の説明で確かめる

確認日 2026年10月11日10分で読めます『会社設立の社会保険早わかり』編集部

あなたの条件がこれなら 法人役員報酬あり未加入
会社設立後に社会保険へ入らないとどうなる?未加入の会社に起きることを条文と年金機構の説明で確かめる
この記事の目次(9項目)
  1. 役員報酬がある法人にとって、社会保険は選ぶものではない
  2. 「入っていない」には2つの意味がある
  3. 日本年金機構は未加入の事業所をどう扱っているか
  4. 立入検査は条文に根拠がある
  5. 保険料はさかのぼって納める:時効は2年
  6. 条文に書かれている罰則
  7. 加入しているかどうかは誰でも検索できる
  8. 気づいた時点でやること
  9. まとめ:未加入は「見つかるかどうか」ではなく「いつ届けるか」の問題

この記事を読んでほしい人

会社設立をしたものの、社会保険の手続きをまだしていない、あるいは「入らないままでも何とかなるのでは」と考えている社長に向けた記事です。未加入のまま続けた場合に実際に何が起き得るのかを、うわさではなく一次情報の文言で知りたい方のために書きました。

役員報酬がある法人にとって、社会保険は選ぶものではない

法人は事業主1人でも加入が義務。日本年金機構は「法律で義務づけられています」と書いている。

まず言葉をそろえます。この記事でいう社会保険は、健康保険と厚生年金保険のことです。40〜64歳の人は介護保険も健康保険とあわせて納めます。労災保険と雇用保険は「労働保険」と呼び、ここでは扱いません。

日本年金機構は、法人事業所で常時従業員を使用する事業所は、健康保険・厚生年金保険の加入が法律で義務づけられていると説明しています。そしてその「従業員」には、事業主のみの場合を含むと書いています。つまり、会社設立をして社長が役員報酬を受け取っていれば、社長1人でも会社は適用事業所(社会保険に入る義務がある事業所)になります。

「入らない」という言葉には、加入を選ばなかったという響きがありますが、役員報酬がある法人の場合、制度上そうした選択肢は用意されていません。入っていない状態は、法律上は「届出をしていない」状態と同じです。この点を出発点に、未加入のまま会社を続けると何が起き得るのかを見ていきます。

ここがポイント

社会保険の加入は、会社の規模や売上ではなく、「法人かどうか」と「報酬を受ける人がいるかどうか」で決まります。

事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日

「入っていない」には2つの意味がある

加入できない会社と、届けていない会社。無報酬の役員しかいない法人は、そもそも適用を受けられない。

社会保険に入っていない法人といっても、中身は2つに分かれます。1つは、役員報酬がゼロで、ほかに被保険者(保険に入る本人)もいない会社です。日本年金機構の書類一覧は、無報酬の役員しかいない法人は適用事業所の要件を満たさないため、適用を受けることができないとしています。これは未加入というより「対象外」です。

もう1つは、役員報酬を払っている、または従業員を雇っているのに、新規適用届などを出していない会社です。こちらがこの記事でいう未加入で、法律上の義務を果たしていない状態にあたります。

あなたの会社はどちら?
あなたの会社はどちら?

前者に当てはまるなら、この記事の内容は「報酬を出し始めたとき」に関係してきます。報酬ゼロの期間については役員報酬なし・報酬ゼロのカテゴリーで扱っています。以下は後者、つまり加入すべきなのに加入していない会社の話です。

報酬は月5万円だけ。それでも社会保険の未加入になる?
役員は、法人から労務の対償として報酬を受けていれば被保険者になるのが原則です。額が小さいことだけで加入しなくてよくなるわけではありません。勤務の実態などで扱いが変わることもあるので、会社設立後に報酬を決めた段階で年金事務所に確かめてください。
合同会社でも同じ?
合同会社も法人なので、株式会社と同じく強制適用の対象です。会社の種類で社会保険の加入義務が変わることはありません。合同会社の役員の扱いは合同会社の役員で扱っています。

健康保険・厚生年金保険 新規加入に必要な書類一覧|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日

日本年金機構は未加入の事業所をどう扱っているか

加入指導→立入検査→認定による加入。自主的に加入しない事業所には、段階を追って対応している。

未加入の会社に対して日本年金機構が何をしているかは、同機構の「適用促進に向けた取り組み」のページに書かれています。保険制度への加入手続きをせず保険料の納付を免れている事業所を「適用調査対象事業所」と呼び、その把握と加入指導に取り組んでいる、という内容です。

書かれている流れを順に並べると、次のようになります。最初は加入の勧奨、それでも自主的に加入しない事業所には年金事務所職員による重点的な加入指導、さらに加入手続きをしない事業所には立入検査を行い、被保険者の資格の有無を確認したうえで、必要に応じて職員の認定による加入手続きを行う、というものです。

ページには、加入指導は「従業員を使用する未適用事業所を中心に」行うとあります。社長1人の会社が後回しになるかどうかは書かれていないので、「社長だけなら見つからない」と読み取るのは無理があります。同じページには、保険制度の加入を免れることはできないので、加入要件に該当する場合は速やかに届出を行うように、とも書かれています。

未加入の事業所への対応(日本年金機構の説明の順)
未加入の事業所への対応(日本年金機構の説明の順)

厚生年金保険・健康保険などの適用促進に向けた取り組み|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日

立入検査は条文に根拠がある

厚生年金保険法100条と健康保険法198条。適用事業所と認められる事業所の事業主にも、検査が及ぶ。

立入検査は、年金事務所の裁量だけで行われているものではありません。厚生年金保険法100条は、厚生労働大臣が被保険者の資格や保険料に関する決定に必要があると認めるときは、適用事業所の事業主だけでなく「適用事業所であると認められる事業所の事業主」に対しても、文書の提出を命じたり、職員に事業所への立入り・質問・帳簿の検査をさせたりできると定めています。

まだ届出をしていない会社でも、実態として適用事業所であれば対象になる、という書き方です。健康保険法にも198条に同じ趣旨の規定があります。日本年金機構のページは、事業主には立入検査に対する受忍義務がある、つまり拒めない立場にあると説明しています。

検査では、給与や役員報酬の支払いが分かる帳簿などを見て、誰が被保険者に当たるかが確認されます。会社設立から間もない会社でも、役員報酬の記録は残っているはずなので、加入すべき時期は記録から確認されることになります。

注意

立入検査がどの程度の頻度で、どんな会社に行われているかについて、日本年金機構は件数などを示していません。この記事では、条文と機構の説明に書かれていることだけを扱っています。

厚生年金保険法 第100条(立入検査等)|e-Gov法令検索e-Gov法令検索(デジタル庁)/確認日 2026年10月11日

保険料はさかのぼって納める:時効は2年

加入すべきだった時点まで戻って加入。保険料を徴収する権利の時効は、行使できる時から2年。

未加入が分かったとき、加入はいつからになるのでしょうか。健康保険法35条・厚生年金保険法13条は、被保険者の資格は事業所が適用事業所となった日などに取得すると定めています。届け出た日から加入するのではなく、加入すべきだった日にさかのぼるのが原則です。日本年金機構も、指摘をしても適正な届出がされない場合には、確認した事実に基づき遡及して職員の認定による手続きを行う、と書いています。

一方で、保険料をどこまでさかのぼって納めるかには時効があります。健康保険法193条は、保険料等を徴収する権利は「これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によって消滅する」と定めています。厚生年金保険法92条も同じく2年です。

数字で見てみます。45歳・東京都・協会けんぽ・役員報酬月30万円の社長が、令和8年度の料率で1か月加入した場合、社会保険料は次のとおりです。

東京都・協会けんぽ・令和8年度・45歳・標準報酬月額30万円の額表の値。2026年10月11日確認
保険 社長の分 会社の分
健保+介護(45歳)11.47% 17,205円 17,205円
子ども・子育て支援金 0.23% 345円 345円
厚生年金 18.300% 27,450円 27,450円
拠出金 0.36%(会社だけ) なし 1,080円
合計(月) 45,000円 46,080円

会社と本人を合わせると1か月で9万1,080円です。社長1人の会社では両方とも会社の資金から出ていきます。未加入の期間が長いほど、さかのぼって納める額は月数に応じて大きくなります。ただし、子ども・子育て支援金は令和8年4月分からの制度で、過去の月はその月に適用されていた料率で計算されるため、この額をそのまま月数倍にしても正確な額にはなりません。

健康保険法 第193条(時効)|e-Gov法令検索e-Gov法令検索(デジタル庁)/確認日 2026年10月11日

条文に書かれている罰則

6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。届出をしない、検査を拒むなどの場合に、正当な理由がないとき。

罰則についても、条文の文言どおりに確かめておきます。健康保険法208条は、事業主が「正当な理由がなくて」次のいずれかに当たるときは「六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」と定めています。厚生年金保険法102条にも同じ内容の規定があります。

  • 資格の取得・喪失などの届出をしない、または虚偽の届出をしたとき(健康保険法48条、厚生年金保険法27条の違反)
  • 督促状に指定された期限までに保険料を納付しないとき
  • 文書の提出命令に従わない、職員の質問に答えない、立入検査を拒む・妨げるとき

条文にこうした罰則があることと、未加入の会社に実際にどれだけ適用されているかは別の話です。日本年金機構の説明は、まず加入指導、次に立入検査と認定による加入という順を示しています。罰則は、その先にある法律上の定めとして読むのが正確です。

なお、以前は「6か月以下の懲役」と書かれていた解説も見かけますが、2026年10月11日時点のe-Gov法令検索の条文は「拘禁刑」です。古い記事を読むときは表記の違いに注意してください。

また、加入したあとに社会保険料の納付が遅れた場合は、罰則とは別に延滞金の定めがあります。督促状の指定期限までに納めないと、納期限の翌日から年14.6%(3か月を経過する日までは年7.3%)の割合で計算した延滞金がかかる、というのが厚生年金保険法87条の内容です。実際の割合は特例基準割合との比較で低い方が使われるので、最新の値は機構の「延滞金について」で見てください。未加入の問題と、加入後の納付の問題は分けて考えると整理しやすくなります。

健康保険法 第208条(罰則)|e-Gov法令検索e-Gov法令検索(デジタル庁)/確認日 2026年10月11日

加入しているかどうかは誰でも検索できる

適用事業所は名称や法人番号で検索できる。就職先や勤め先の加入状況を、個人が確かめるための仕組み。

未加入のリスクとして見落とされやすいのが、加入状況が外から見えるという点です。日本年金機構は「厚生年金保険・健康保険適用事業所検索システム」を公開していて、事業所の名称・所在地・法人番号を入力すると、加入している事業所の情報を誰でも一覧で見ることができます。

機構はこのシステムの目的を、個人が就職先や勤め先の加入状況を確認するため、と説明しています。表示される項目には、事業所が加入した年月日(適用年月日)や被保険者数が含まれます。会社設立から相当の期間がたっているのに検索で出てこない、あるいは適用年月日が会社設立の日より大きく後になっている、といったことは、採用の場面で求職者の目に触れる可能性があります。

従業員を雇う予定がある会社ほど、この点は無視できません。求人を出す前に、自分の会社が検索結果にどう表示されるかを一度確かめておくと、社会保険の加入状況を説明するときにも困りません。従業員の加入条件そのものは従業員・パートの加入条件で扱っています。

適用事業所検索で見える主な項目
適用事業所検索で見える主な項目

厚生年金保険・健康保険適用事業所情報を検索できます|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日

気づいた時点でやること

まず年金事務所に相談。手順は専門家と。一度に納めるのが難しいときの猶予制度もある。

会社設立から時間がたって社会保険の未加入に気づいた場合、先延ばしにするほどさかのぼる月数は増えます。会社設立の日をはっきりさせておくことが、さかのぼる期間を確かめる起点になります。最初の一歩は、管轄の年金事務所へ、会社設立の日付、報酬の支払いを始めた日、従業員がいるかどうかを持って相談に行くことです。届出の書き方や添付書類はこのサイトでは扱わず、「会社設立後の手続き」のテーマに任せます。書類の作成や提出を任せたい場合は、社会保険労務士の業務になります。

さかのぼった分の保険料を一度に納めるのが難しい場合に備えて、日本年金機構には換価の猶予・納付の猶予という制度があります。換価の猶予は、保険料を一時に納付することで事業の継続などが難しくなるおそれがあり、納付に誠実な意思があると認められる場合に、納期限から6か月以内に申請すると、分割して納付できるというものです。使えるかどうかは個別の判断なので、年金事務所で確認してください。

会社設立の直後で手続きに不安がある人は、加入義務の全体像を社長1人の会社でも社会保険に加入する?で、期限を過ぎてしまった場合の考え方を5日過ぎた・遅れた場合で確認できます。

厚生年金保険料等の猶予(換価の猶予・納付の猶予)|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日

まとめ:未加入は「見つかるかどうか」ではなく「いつ届けるか」の問題

加入日は戻り、保険料は2年の範囲で。指導・検査・認定・罰則の順に、条文と機構の説明が並んでいる。

役員報酬を払っている法人が社会保険に加入していない状態は、法律上は届出をしていない状態です。日本年金機構は加入勧奨・加入指導・立入検査・認定による加入という段階で対応していて、加入日は本来の日にさかのぼり、保険料は2年の時効の範囲で徴収されます。条文には、届出をしない場合などの罰則として6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。

  • 報酬ゼロで被保険者がいない会社は「対象外」。未加入とは区別する
  • 報酬がある法人は、社長1人でも加入が義務
  • 加入日は届け出た日ではなく、適用事業所になった日
  • 保険料を徴収する権利の時効は2年(健康保険法193条・厚生年金保険法92条)
  • 加入状況は適用事業所検索で誰でも確認できる

社会保険料がいくらになるかを先に知っておきたい人は、社会保険料はいくら?計算で報酬額ごとの目安を確かめてから、年金事務所に相談するとよいでしょう。

法人の事業所は、すべて厚生年金保険の適用事業所となるはずですが、私の周囲に未加入の事業所を見かけます。加入する義務があるのではないですか。|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日

最後に、読んでくださったあなたへ

会社設立の直後は、資金も時間も足りないなかで手続きが山のように重なります。社会保険を後回しにしてしまった事情は、多くの社長に覚えがあるはずです。ただ、加入日は本来の日に戻るので、待っていても負担は減りません。気づいた今が一番さかのぼる月数の少ない時点です。年金事務所や社会保険労務士に、会社設立の日と最初に報酬を払った日を伝えるところから始めてみてください。

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