初回の社会保険料が見込みと違う?会社設立1年目に告知額がずれる6つの理由
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会社を設立して社会保険に加入し、年金事務所から最初の納入告知書を受け取った社長に向けた記事です。「思っていたより多い」「先月と金額が違う」と感じたとき、どこを見れば理由が分かるのかを整理しました。これから1年目の資金繰りを組む方が、告知額が動く場面を先に知っておくためにも使えます。
告知額は「届け出た内容」から計算される

会社設立後に届く「保険料納入告知書」の金額は、年金事務所が勝手に決めているわけではありません。日本年金機構は、事業主から届け出た被保険者の資格取得・喪失、標準報酬月額、賞与支払などの内容をもとに、毎月10日ごろに前月分を確定し、20日ごろに告知書を送ると案内しています。
つまり、告知額が自分の見込みとずれるときは、届け出た内容か、計算の前提のどちらかに理由があります。ここでいう社会保険料は、健康保険料(40〜64歳は介護保険料を含む)、子ども・子育て支援金、厚生年金保険料に、会社だけが負担する子ども・子育て拠出金を加えた、年金事務所に納める総額のことです。労働保険料は別の仕組みなので含めません。

社会保険に加入したばかりの社長にとって、告知書は「会社が毎月いくら払うか」を初めて具体的な数字で見る書類です。社会保険の仕組みを知らないまま金額だけを見ると、どこかで手続きを誤ったのではと心配になりますが、会社設立1年目には、制度どおりに処理されていても金額が動く場面がいくつも重なります。
1つずつ見ていく前に、手元に用意しておくとよいものを挙げておきます。届いた告知書、年金事務所に出した届出の控え、役員報酬の明細、そして加入した年度の保険料額表です。この4つを並べれば、ずれの理由はたいてい見つかります。
納付期限|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日
理由1:月末に会社設立・加入しても、その月は1か月分

39歳のIさんは、6月28日に合同会社を設立し、同じ日から役員報酬月26万円で社会保険に加入しました。7月20日ごろに届いた告知書には、6月分として1か月分の保険料が載っていました。「3日しか加入していないのに」と感じるかもしれませんが、これは計算の誤りではありません。
厚生年金保険法第19条は、被保険者期間を月で数え、資格を取得した月から喪失した月の前月までを算入すると定めています。保険料もこの月ごとにかかるので、6月28日に加入したIさんは6月分から1か月分を納めます。同じ条文の第2項は、資格を取得した月に資格を喪失したときも、その月を1か月として数えるとしています。
| 項目 | 本人負担 | 会社負担 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 12,805円 | 12,805円 |
| 子ども・子育て支援金 | 299円 | 299円 |
| 厚生年金保険料 | 23,790円 | 23,790円 |
| 子ども・子育て拠出金 | なし | 936円 |
| 合計(6月分の告知額 74,724円) | 36,894円 | 37,830円 |
Q. 6月30日に加入して、7月1日に役員を辞めたらどうなりますか?
A. 資格を取得した月にその資格を失うと、その月は1か月として数えられます。6月分の社会保険料はかかります。
Q. 月末の加入を避ければ、初回の社会保険料は安くなりますか?
A. 加入した月の分は日付にかかわらず1か月分なので、翌月1日に加入すれば最初の保険料が翌月分になる、というだけです。加入日は事実で決まるので、保険料のために動かすものではありません。
加入日が月末に近いほど、初回の告知額が「日数のわりに大きい」と感じやすくなります。月単位の数え方は社会保険はいつから?加入日の考え方で、会社設立の日付と加入した月の関係とあわせて扱っています。
厚生年金保険法 第19条(被保険者期間)|e-Gov法令検索デジタル庁 e-Gov/確認日 2026年10月11日
理由2:届出が遅れると、さかのぼった月の分がまとめて来ることがある

設立した直後に社会保険の届出が遅れ、事実発生から5日を大きく過ぎて出した場合でも、加入日は事実が生じた日のままです。届出が処理されると、加入日の月までさかのぼって保険料が計算されるので、最初に届く告知書に複数の月の分がまとめて載ることがあります。
たとえばIさんが6月28日に加入したのに、届出を8月に出したとします。7月20日ごろには告知書が来ず、届出が処理された後の告知で6月分と7月分がまとめて請求される、という形がありえます。日本年金機構は、届出が適正でない場合は確認した事実に基づいて遡って手続きすることがあると公表しています。
まとめて請求されたときに迷うのが、本人負担分の扱いです。健康保険法第167条と厚生年金保険法第84条で報酬から差し引けるのは原則として前月分の保険料なので、さかのぼった月の本人負担をどう精算するかは、社長1人の会社でも記録の上で整理が必要です。処理の仕方は顧問の社会保険労務士や税理士に確かめてください。届出が遅れた場合の全体像は5日を過ぎた・遅れたときに、加入しないままにした場合は未加入のリスクにまとめています。
まとめて届いた告知書は金額が大きく見えますが、中身は各月の保険料を足したものです。告知書に載っている月を数え、1か月分の見込み額に月数を掛けた額と比べれば、ずれが届出の遅れによるものかどうかはすぐに分かります。会社設立の年に限らず、納付期限が来る前に口座の残高を確かめておくことが、延滞金を避けるいちばん確実な方法です。
厚生年金保険・健康保険などの適用促進に向けた取り組み|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日
理由3:年度や年齢で、かかる保険料の種類と率が変わる

報酬を変えていないのに告知額が変わったら、率の側を疑います。協会けんぽ東京支部の令和8年度の額表では、健康保険料率と介護保険料率は令和8年3月分から、子ども・子育て支援金率は令和8年4月分(5月納付分)からの適用です。会社設立がこの切り替えの前後にかかると、初回と2回目で告知額が違って見えます。
年齢もずれの原因になります。協会けんぽは、介護保険料は「満40歳に達したとき」から徴収が始まり、それは40歳の誕生日の前日で、その日が属する月から介護保険の第2号被保険者になると説明しています。誕生日が1日の人は、前日が前月末になるので、1か月早く始まります。

反対に、65歳になると介護保険の第2号被保険者ではなくなり、会社の社会保険の告知額から介護保険料が外れます(その後は市区町村に第1号被保険者として納めます)。会社設立の年齢が60代前半の社長は、こちらの切り替わりも覚えておくとよいでしょう。
Iさんの誕生日が11月15日なら、前日の11月14日が属する11月分から介護保険料が加わり、12月20日ごろに届く告知書で増えます。会社負担も同じ2,106円増えるので、会社が納める総額は4,212円増えます。社会保険の加入した年に40歳を迎える社長は、この月を資金繰りの表に書き込んでおくと慌てません。介護保険料と支援金の仕組みは介護保険と子ども・子育て支援金で詳しく扱っています。
介護保険制度と介護保険料について|全国健康保険協会 茨城支部全国健康保険協会/確認日 2026年10月11日
理由4:賞与を払った月は、翌月の告知に賞与分が加わる

1年目のうちに、役員や従業員へ初めて賞与を払うこともあります。日本年金機構によると、賞与にかかる保険料は、実際に支払った賞与額(税引き前)から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率を掛けた額で、毎月の保険料と合算されて、賞与を払った月の翌月の告知書で知らされます。賞与を払った日から5日以内に賞与支払届を出すことも求められています。
標準賞与額の上限は、健康保険(介護保険料・支援金を含む)が年度の累計573万円、厚生年金保険と子ども・子育て拠出金が1か月150万円です。事業主は、本人負担分を賞与を払うときにその賞与から差し引くことができます。
| 項目 | 本人負担 | 会社負担 |
|---|---|---|
| 健康保険料(9.85%) | 24,625円 | 24,625円 |
| 子ども・子育て支援金(0.23%) | 575円 | 575円 |
| 厚生年金保険料(18.3%) | 45,750円 | 45,750円 |
| 子ども・子育て拠出金(0.36%) | なし | 1,800円 |
| 合計(賞与分の告知額 143,700円) | 70,950円 | 72,750円 |
同じ賞与50万円でも、40〜64歳の人なら介護保険料(1.62%)が加わり、本人と会社がそれぞれ4,050円ずつ多く負担します。賞与の額が同じでも、払う相手の年齢によって告知額が変わる点は、毎月の保険料と同じです。
12月に賞与50万円を払えば、1月20日ごろの告知書には、12月分の毎月の保険料にこの143,700円が上乗せされます。役員に賞与を払う場合の税金上の扱いは別のルールがあり、このサイトでは「節税・会社員の会社設立」のテーマに委ねます。ここで押さえたいのは、賞与を払った翌月の告知額が大きくなるという点です。
従業員に賞与を支給したときの手続き|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日
理由5:役員報酬を変えたら、標準報酬月額の改定を待つ

法人にしてから役員報酬を上げ下げしたのに告知額が変わらない、あるいは忘れたころに変わる、ということもあります。保険料の計算に使う標準報酬月額(毎月の報酬を一定の幅で区切った、保険料計算用の金額)は、報酬を変えた月にすぐ切り替わるわけではないからです。
日本年金機構の説明では、固定的賃金の変動があり、変動した月から続く3か月の報酬の平均で出した標準報酬月額と従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が出たなどの要件を満たすと、随時改定が行われます。また毎年1回、4月から6月の報酬をもとに定時決定が行われ、決め直された標準報酬月額は9月から翌年8月まで使われます。
随時改定
報酬を大きく変えたとき。変動月から3か月の平均で2等級以上の差が出るなどの要件を満たすと、4か月目から標準報酬月額が変わる。
定時決定
毎年4〜6月の報酬で決め直し、9月分から翌年8月分まで使う。会社設立1年目の秋に告知額が動く理由になる。
具体的に置いてみます。Iさんが10月に支払う報酬から月26万円を月36万円に上げ、その後も同じ額が続いたとします。標準報酬月額は26万円から36万円へ、健康保険の等級で5つ上がるので、ほかの要件も満たせば、変更後の報酬を初めて受けた10月から数えて4か月目の1月分から改定されます。1月分の保険料は2月20日ごろの告知書に載るので、報酬を上げてから告知額が変わるまで4か月ほどかかる計算です。その間の告知額が以前のままでも、届出に誤りがあるわけではありません。
役員報酬をいつ・どう変えるかのルール(定期同額給与など)は、このサイトの範囲外で、「会社設立後の手続き」のテーマや「節税・会社員の会社設立」のテーマのテーマで扱います。報酬額と標準報酬月額の等級の関係は役員報酬と標準報酬月額で、定時決定と随時改定の入口は算定基礎と月額変更で確かめられます。
随時改定(月額変更届)|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日
理由6:告知額と、報酬から差し引いた額が1円合わない

最後は小さなずれです。協会けんぽの額表の注記によると、納入告知書の保険料額は被保険者それぞれの保険料額を合算した金額で、合算した金額に円未満の端数があれば切り捨てます。一方、本人負担分を報酬から差し引くときの端数は、50銭以下は切り捨て、50銭を超えれば切り上げが原則です(特約があれば特約に従います)。
標準報酬月額41万円の等級では、本人負担の健康保険料が20,192.5円のように50銭の端数を持ちます。報酬から差し引く側で端数を処理すると、告知額から本人負担の控除額を引いた残り、つまり会社負担分が、表の折半額と1円程度ずれることがあります。これは計算の誤りではなく、2つの端数処理のルールが別々に働いた結果です。
社会保険料を口座振替で納めている場合は、日本年金機構からは告知書の代わりに「保険料納入告知額・領収済額通知書」が届きます。振替額が見込みと1円違っても、まずはこの端数の仕組みを疑ってみてください。
社長1人の会社なら、このずれはどちらも同じ会社のお金の中での話です。それでも帳簿の上では、本人負担として報酬から預かった額と、会社が費用として負担した額を分けておくと、決算のときに説明がつきます。
令和8年度保険料額表(東京支部)PDF|協会けんぽ全国健康保険協会(協会けんぽ)/確認日 2026年10月11日
まとめ:初回の社会保険料のずれは、6つの理由に当てはめて確かめる

会社設立後の社会保険料は、加入した月の分を翌月末日までに納めるのが基本です。そのうえで、初回や1年目の告知額が見込みと違うときは、月末加入、届出の遅れ、年度や年齢による率の変化、賞与、報酬の変更、端数のどれに当たるかを順に確かめます。

初回の納付の流れと、報酬月額ごとの金額の目安は社会保険料はいくら?計算のしかたと、同じカテゴリーのもう1本の記事で確かめられます。どの理由にも当てはまらないずれが残ったら、告知書を持って管轄の年金事務所に問い合わせるのが早道です。
厚生年金保険料等の納付|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日
最後に、読んでくださったあなたへ
告知書の金額が自分の計算と違うと、何か手続きを間違えたのではと不安になるものです。けれど、会社設立1年目のずれの多くは、月単位の数え方や率の切り替えといった、決まった仕組みから生まれています。この記事のチェックリストに沿って、告知書と届出の控えを1枚ずつ見比べてみてください。それでも説明のつかない差が残るときは、遠慮せずに年金事務所に確かめ、必要なら社会保険労務士に処理を相談してください。
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