会社設立の社会保険に入らない?入らなくてよい場合と入っていないときの影響を整理する
この記事の目次(8項目)
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この記事は、会社設立をしたものの「社会保険には入らなくていいのでは」と考えている方、報酬を出していないので入れないと言われた方、そして気づいたら手続きをしないまま時間がたっていた方に向けています。まず自分が3通りのどれに当たるのかを見分け、そのうえで次に確かめる先を決められるように書きました。
「入らない」の中身は3通り:入らなくてよい、入れない、入っていなかった

会社設立のあとの社会保険に「入らない」と検索する人は、少なくとも3つの事情に分かれます。1つめは、制度の要件を満たしていないので入らなくてよい場合。2つめは、入りたくても入れない場合。3つめは、入る必要があったのに手続きをしていなかった場合です。ここでの「社会保険」は健康保険と厚生年金保険で、40〜64歳は介護保険が加わります。

最初の2つは、入らないことが制度の側から決まる場合で、自分で選んだ結果ではありません。3つめは、手続きの遅れや漏れの問題です。法人の事業所は、事業主のみの場合を含めて常時従業員を使用するものが適用事業所になると、日本年金機構が説明しています。つまり、要件を満たした法人が「加入するかどうか」を選べる仕組みではありません。
| あなたの状況 | 3通りのどれか | 次に読む場所 |
|---|---|---|
| 役員報酬を出していない社長1人の会社 | 入れない(入らなくてよい) | この記事の第2章 |
| 70歳を過ぎている、または短時間のパートだけ | 要件によっては入らなくてよい | この記事の第3章 |
| 報酬は出しているが、届出をしていない | 入っていなかった | この記事の第5章〜第7章 |
加入の条件を判定表で当てはめたい方は会社設立の社会保険に加入する条件を、いつから始まるのかはいつからのカテゴリーを見てください。この記事は、入らない側の事情と、入っていないときの影響に絞ります。
事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
入れない・入らなくてよい①:役員報酬のない、無報酬の役員だけの会社

入らない理由として最も多いのが、役員報酬をゼロにしている会社です。日本年金機構は、新規加入に必要な書類の一覧で、被保険者となる者がいない法人事業所について次のように書いています。
ここがポイント
「法人事業所で、被保険者となる者がいない場合(無報酬の役員しかいない場合等)は、適用事業所の要件を満たさないため、適用を受けることができません。」(日本年金機構「新規加入に必要な書類一覧」より)
つまり、社長1人で役員報酬をゼロにした会社は、社会保険に入れません。例として45歳のLさんは、会社員を辞めて会社設立をしたものの、最初の半年は売上が立たないので役員報酬を出さない計画です。この半年間、Lさんは会社の社会保険ではなく、国民健康保険と国民年金に入ることになります。会社設立をしたからといって、社会保険に入る義務が自動的に生まれるわけではありません。

報酬の有無だけでなく、実態も見られます。厚生労働省が公表している役員の被保険者資格の判断基準は、その業務が実態として法人の経営に参画する経常的な労務の提供であるか、報酬がその業務の対価として経常的に支払われるものか、の2点を総合的に判断するというものです。求めに応じて意見を述べる立場にとどまっている場合は、適用がないと判断する例として示されています。
ただし、報酬を払い始めた月からは話が変わります。経常的な報酬が出る常勤の役員になれば、その日が加入の対象になり、国民健康保険の脱退の届出も必要です。報酬を出していない間の過ごし方と、払い始める月の切り替えは役員報酬のカテゴリーで詳しく扱っています。なお、保険料を避ける目的で実態に合わない報酬額を設定することは、おすすめしません。
健康保険・厚生年金保険 新規加入に必要な書類一覧|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
入らなくてよい②:事業所の形・年齢・働き方で線が引かれる場合

報酬ゼロのほかにも、制度の線引きで入らなくてよい場合があります。会社設立をした社長本人に当てはまる線と、これから雇う従業員に当てはまる線を、分けて見ていきます。
| 線の種類 | 入らなくてよい(対象外)になる例 | 入る場合 |
|---|---|---|
| 事業所の形 | 個人事業で、従業員が常時5人未満(一部の業種は5人以上でも対象外) | 法人にした場合は、事業主のみでも適用事業所になる |
| 社長の年齢(厚生年金) | 70歳以上は、厚生年金保険の被保険者にならない | 健康保険は75歳になる前まで加入する |
| 社長の年齢(健康保険) | 75歳になると後期高齢者医療制度に移る | それまでは会社の健康保険に加入 |
| 従業員の働き方 | 週の所定労働時間などが基準を下回る短時間のパート | 正社員の4分の3以上、または特定適用事業所で要件を満たす短時間労働者 |
個人事業の人数基準は、会社設立をした人には直接関係しません。法人は事業主のみでも強制適用だからです。年齢の線は、たとえば72歳で会社設立をした社長なら、厚生年金保険には入らず、健康保険だけに入る形になります。70歳以上で新たに設立した場合の届出は、日本年金機構のQ&Aでも案内されています。
従業員の線は、これから雇う会社にとって重要です。日本年金機構の説明では、パート・アルバイトは、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務をする正社員の4分の3以上であれば被保険者になります。それに満たなくても、特定適用事業所に勤める短時間労働者は、週の所定労働時間が20時間以上などの要件で対象になります。
パートの加入条件を表で判定する方法は会社設立後に雇うパートの社会保険加入条件に、70歳以上の社長の扱いは70歳以上の社長の社会保険にまとめています。この記事は、あくまで「入らなくてよい線」を一覧するための入口です。
適用事業所と被保険者|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
「入らないで済ませたい」と思ったときに、先に知っておきたい仕組み

保険料の負担を考えると、できれば社会保険に入らずに済ませたいと感じる方もいるでしょう。このサイトは、保険料を減らすためだけの形式的な報酬設定や、実態と合わない雇用形態は勧めません。報酬の水準を、社会保険料の損得だけで決めることもしません。理由は、入る・入らないで受けられる保障が変わるからです。
| 比べる点 | 会社の社会保険に入った場合 | 国民健康保険・国民年金のままの場合 |
|---|---|---|
| 加入する制度 | 健康保険と厚生年金保険 | 国民健康保険と国民年金(第1号) |
| 保険料の負担 | 会社と本人が折半(社長1人なら両方とも自分の会社のお金) | 全額を自分で負担する |
| 病気で働けないとき | 傷病手当金:連続3日の待期後、4日目以降の仕事に就けなかった日に支給 | 国保の傷病手当金は、市町村などが条例・規約で定めた場合に行うことができる給付 |
| 年金 | 厚生年金保険の被保険者期間になる | 国民年金のみの期間になる |
| 家族の扱い | 条件を満たす家族が被扶養者になれる | 家族それぞれが国保に加入する |
報酬の額を決めるときは、実際の働き方と、会社の資金計画に沿って考えるのが基本です。たとえば45歳・東京都・協会けんぽ・令和8年度・標準報酬月額30万円なら、本人負担は健康保険料14,775円、介護保険料2,430円、子ども・子育て支援金345円、厚生年金保険料27,450円で、合わせて月45,000円です。この金額を高いと見るかは人によって違いますが、同額が会社負担としても別にかかる点、傷病手当金や厚生年金の年金額に反映される点を、天秤にかけて考えます。
注意
報酬の決め方や定期同額給与といった税務のルールは、このサイトでは扱いません。「節税・会社員の会社設立」のテーマのテーマです。社会保険の側では、報酬額が標準報酬月額のどの等級になり、保険料がいくらになるかまでを確かめられます。
傷病手当金|全国健康保険協会全国健康保険協会/確認日 2026年10月23日
入っていないと、どうなるのか:公的な説明の3段階と条文

要件を満たしているのに手続きをしていない場合、何が起きるのか。脅す意図はなく、公表されている事実だけを順に並べます。日本年金機構の「未適用事業所に対する取り組み」では、次の段階が示されています。
- 加入の勧奨・指導加入を勧奨しても自主的に加入しない事業所のうち、従業員を使用する未適用事業所を中心に、年金事務所の職員が重点的な加入指導を行う。
- 立入検査重点的な加入指導を行っても加入手続きを行わない事業所には、職員が立入検査を行い、被保険者の資格の有無の事実を確認する。
- 職員の認定による手続き必要に応じて、職員の認定による加入手続きを実施する。適正な届出がされない場合は、確認した事実に基づき遡及した手続きも行われる。
立入検査には条文の根拠があります。厚生年金保険法第100条は、厚生労働大臣が被保険者の資格や保険料に関する決定に必要と認めるとき、適用事業所または適用事業所であると認められる事業所の事業主に文書の提出を命じ、職員を立ち入らせて質問や帳簿の検査をさせることができると定めています。
罰則も条文で確かめられます。厚生年金保険法第102条と健康保険法第208条は、事業主が「正当な理由がなくて」資格取得などの届出をせず、または虚偽の届出をしたときなどに、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処すると定めています。条文の対象は「正当な理由がなくて」届出をしない場合で、手続き漏れに気づいてすぐ届け出る場合と同じ扱いになるとは限りません。実際の運用は年金事務所に確認してください。
未加入の期間の保険料を遡って納める場合の限度は、時効の2年とされています。遅れた期間ごとの違いは未加入の会社に起きることを条文で確かめた記事と、期限の話を集めたいつまでのカテゴリーで整理しています。この記事では、加入の指導から認定までに段階があること、自分から届け出る道が先にあることを押さえてください。
厚生年金保険・健康保険などの適用促進に向けた取り組み|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
社長・家族・従業員の側で起きること:失うもの、続くもの

社会保険に入っていない状態は、会社の帳簿の問題にとどまらず、人ごとの保障に出ます。社長、家族、従業員の3者に分けて整理します。
| 誰 | 起きること | 根拠・確かめた点 |
|---|---|---|
| 社長本人 | 未加入の期間は厚生年金保険の被保険者期間にならない。健康保険の傷病手当金の対象にもならない | 厚生年金保険法第19条(被保険者期間は月で数える)、協会けんぽの傷病手当金 |
| 家族 | 被保険者の扶養に入る仕組み(被扶養者、国民年金の第3号)が使えず、家族ごとに国保・国民年金に入る | 国民年金法第7条:第3号は第2号被保険者の配偶者 |
| 従業員 | 自分で資格の確認を請求できる。いつでも請求できると条文にある | 厚生年金保険法第31条・健康保険法第51条 |
従業員のほうは、受け身ではありません。被保険者または被保険者であった者は、いつでも資格の確認を請求できると、厚生年金保険法第31条は定めています。従業員を雇ってから手続きを後回しにしていると、従業員側から確認が求められる場面がありえます。
家族の面でも違いが出ます。会社設立をした社長が社会保険に加入していれば、配偶者などが被扶養者として健康保険に入り、20歳以上60歳未満の配偶者は国民年金の第3号被保険者になれる場合があります。社会保険に入っていない期間は、この仕組みが使えないため、家族の保険料の負担が別に生じます。
家族ごとの扶養の判定は、加入のカテゴリーにある扶養の記事で確かめられます。未加入の期間に社長・家族・従業員の側で起きる具体的なことと、あとで加入したときの精算の順番は、未加入の期間に起きることを人ごとにまとめた記事に詳しく書いています。
厚生年金保険法 第31条(確認の請求)|e-Gov法令検索e-Gov法令検索(デジタル庁)/確認日 2026年10月23日
入っていないと気づいたとき:確かめる順番と、あとで加入する流れ

「入っていなかったかもしれない」と気づいたときは、慌てずに事実を整理するところから始めます。日本年金機構は、適用事業所の情報を誰でも検索できるシステムを公開しています。自社が載っているかどうかは、会社名や所在地で確かめられます。載っていなければ、新規適用の手続きが済んでいない可能性があります。

届出が済んだあとの精算は、国民健康保険と国民年金の側で出てきます。国民年金は、厚生年金保険に加入すると勤務先の手続きで自動的に資格に反映され、第1号被保険者に該当しなくなった月以降の保険料は納めなくてよくなります。納め過ぎがあれば日本年金機構から通知が届く、というのが横浜市の案内です。
国民健康保険のほうは、加入先の変更を自分で届け出る必要があります。社会保険に入っていた期間に国保で受診していた場合は、国保が負担した医療費の返還を求められることがあり、返還した分は、受診時に加入していた健康保険に請求できます。ただし、受診した日の翌日から2年以上たつと時効になる、と柏市は案内しています。
遅れの長さによって保険料の合計や手続きの重さが変わるので、早く動いたほうが整理すべき事実も少なくて済みます。書類の作成や提出の代行は社会保険労務士の業務で、当サイトでは代わりに行えません。相談先の探し方や費用の考え方は自分で手続きする場合と社労士に頼む場合で確かめてください。
厚生年金保険・健康保険適用事業所情報を検索できます|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
まとめ:「入らない」は3通りに分けて、次の一手を決める

会社設立の社会保険に「入らない」という状態は、入らなくてよい場合、入れない場合、入っていなかった場合の3通りに分かれます。無報酬の役員だけの法人は、適用事業所の要件を満たさず、社会保険に入れません。70歳以上の厚生年金など、年齢や働き方の線引きで対象外になる場合もあります。要件を満たしているのに届出をしていないなら、加入の指導や立入検査の対象になりえます。

いつから加入になるかは会社設立の社会保険はいつからに、手続きの期限と遅れたときの整理は会社設立の社会保険はいつまでにあります。入るかどうかの判定は加入のカテゴリーの判定表で確かめられます。届出の書き方は「会社設立後の手続き」のテーマのテーマです。
法人の事業所は、すべて厚生年金保険の適用事業所となるはずですが、私の周囲に未加入の事業所を見かけます。加入する義務があるのではないですか。|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
最後に、読んでくださったあなたへ
「入らない」という言葉の裏には、費用への不安や、情報が多すぎて分からないという戸惑いがあるものです。要件を満たさないから入らないのか、入りたくないから入らないのかで、その先の道はまるで違います。この記事の3通りの見分けに自分を当てはめて、迷ったら年金事務所か社会保険労務士に、会社設立の日や報酬の開始日を書いたメモを見せて相談してみてください。早く動けば、整理すべき事実は少なくて済みます。