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会社設立の社会保険早わかり

社長1人・役員報酬ゼロ・在職中、ケース別に加入と保険料を確かめる

会社設立 社会保険 年金

70歳以上で会社設立した社長の社会保険|厚生年金は対象外、健康保険だけ加入して届出は必要

確認日 2026年10月11日10分で読めます『会社設立の社会保険早わかり』編集部

あなたの条件がこれなら 社長70歳以上役員報酬あり年金受給中
70歳以上で会社設立した社長の社会保険|厚生年金は対象外、健康保険だけ加入して届出は必要
この記事の目次(8項目)
  1. 70歳以上の社長は、厚生年金に入らず健康保険だけ加入する
  2. 年齢で変わる社会保険の加入:40歳・65歳・70歳・75歳
  3. 75歳以上で会社をつくっても、年金事務所への届出は要る
  4. 社会保険料はいくら?72歳・役員報酬月50万円の例
  5. 厚生年金に入らなくても、在職老齢年金の調整は続く
  6. 受給資格が足りない社長には、高齢任意加入という道もある
  7. 健康保険の切り替えと家族の扶養:国保・任意継続から移るとき
  8. まとめ:70歳以上の会社設立は「健康保険だけ・届出あり・年金は調整あり」

この記事を読んでほしい人

70歳を過ぎてから会社をつくる、またはつくったばかりの社長に向けた記事です。長年の経験を生かして法人で仕事を続けたい方、すでに老齢厚生年金を受け取っていて「もう厚生年金には入らないはずだが、会社の社会保険はどうなるのか」と迷っている方が、年齢ごとの線を自分に当てはめられるようにまとめました。

70歳以上の社長は、厚生年金に入らず健康保険だけ加入する

70歳を過ぎた社長は、健康保険だけの加入。厚生年金保険の被保険者は70歳未満。会社をつくっても、この線は変わらない。

先に結論です。70歳以上の人が会社設立をして役員報酬を受け取る場合、会社の社会保険のうち加入するのは健康保険だけで、厚生年金保険の被保険者にはなりません。ここでいう社会保険は、健康保険と厚生年金保険の2つ(40〜64歳は介護保険を含む)を指します。労災保険と雇用保険は「労働保険」として別に扱います。

根拠は厚生年金保険法第9条です。条文は「適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする」と定めています。被保険者とは、その保険に加入して保険料を負担し、給付を受ける本人のことです。年齢の上限が条文に書き込まれているので、会社設立のタイミングや報酬の額にかかわらず、70歳になった時点で厚生年金の加入対象から外れます。

一方、健康保険には70歳の線がありません。法人は社長1人でも社会保険の適用事業所(加入が法律で義務づけられた事業所)になるので、役員報酬を受けている70歳以上の社長は、健康保険の被保険者として加入します。たとえば72歳で法人を設立し、役員報酬を月50万円にした人なら、健康保険には入り、厚生年金には入らない、という組み合わせになります。

ここがポイント

70歳以上の会社設立で押さえる線は2本です。厚生年金は70歳未満まで、健康保険は75歳になるまで。この2本の間にいる社長は「健康保険だけ加入」になります。

厚生年金保険法 第9条(被保険者)|e-Gov法令検索e-Gov法令検索(デジタル庁)/確認日 2026年10月11日

年齢で変わる社会保険の加入:40歳・65歳・70歳・75歳

40・65・70・75歳で、加入する保険が変わる。介護保険の扱いも65歳で切り替わる。社長の年齢を表に当てはめる。

社長の年齢によって、会社の社会保険で何を負担するかは段階的に変わります。70歳だけでなく、40歳・65歳・75歳にも線があるので、まとめて並べておきます。会社設立をした年齢がどの帯に入るかで、毎月の社会保険料の内訳がまったく違ってきます。

社長の年齢と、会社で加入する社会保険
社長の年齢と、会社で加入する社会保険

介護保険は、40歳以上65歳未満で医療保険に加入している人が第2号被保険者となり、健康保険料に介護保険料が上乗せされます。65歳以上は第1号被保険者に変わるので、会社の健康保険料に介護保険料は加わりません。協会けんぽの額表でも、介護保険第2号被保険者は40歳から64歳までの方と明記されています。

65〜69歳で会社をつくった社長は、健康保険と厚生年金の両方に加入します。そして70歳の誕生日を迎えると厚生年金から外れ、健康保険だけが残ります。この切り替わりの場面は社長が70歳を迎えたときの厚生年金と在職老齢年金で詳しく扱っています。

令和8年度保険料額表(東京支部)PDF|協会けんぽ全国健康保険協会(協会けんぽ)/確認日 2026年10月11日

75歳以上で会社をつくっても、年金事務所への届出は要る

保険料ゼロでも、新規適用届は必要。日本年金機構のQ&Aは、75歳で法人を設立した役員のケースに答えている。

75歳以上になると、健康保険の被保険者からも外れて後期高齢者医療制度に移ります。厚生年金もすでに対象外です。では、75歳の人が会社設立をして役員報酬を受け取る場合、社会保険の手続きは何もしなくてよいのでしょうか。

日本年金機構の年金Q&Aに、まさにこの質問があります。答えは「事業所として加入する新規適用届と、事業主の資格取得届(70歳以上被用者該当届)の提出が必要」です。そのうえで、保険料は厚生年金保険が70歳まで、健康保険が75歳までなので、このケースではいずれも保険料を納める必要はない、と続きます。

では、なぜ保険料がかからないのに届出が要るのか。理由は在職老齢年金です。平成19年4月以降、70歳以上で会社に使用される人にも在職老齢年金の仕組みが適用されることになり、その人を把握するために届出が必要になりました。報酬の額によっては受け取っている老齢厚生年金が調整されるため、会社として報酬を届け出る意味があるわけです。

ここで注意したいのが、70歳以上被用者に当たるには「過去に厚生年金保険の被保険者期間があること」が条件になっている点です。たとえば、若いころからずっと個人事業を営み、国民年金だけに加入してきた人が71歳で法人を設立した場合、この条件を満たしません。反対に、会社員として厚生年金に加入していた期間が少しでもあれば、条件を満たす可能性があります。自分がどちらに当たるかは、ねんきん定期便の加入記録で確かめられます。

また、社長本人が70歳以上でも、会社にほかの役員や従業員がいれば、その人たちは年齢に応じて健康保険・厚生年金保険に加入します。会社設立のときに社会保険の手続きが「社長の分だけ」で終わるとは限らないので、報酬を払う人を全員書き出してから確かめると漏れがありません。

70歳以上被用者に当たるかの確かめ方
70歳以上被用者に当たるかの確かめ方

届出の様式や提出方法、期限の数え方といった具体的な手順は、このサイトでは扱いません。「会社設立後の手続き」のテーマで確かめてください。ここでは「保険料がかからない年齢でも、会社設立をしたら届出の対象になり得る」という点だけ覚えておけば十分です。

新たに法人事業所を設立し、役員報酬を受け取ることにしました。現在75歳で後期高齢者医療保険に加入しており、厚生年金も受給しているため、社会保険の手続きはしなくてもよいでしょうか。|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日

社会保険料はいくら?72歳・役員報酬月50万円の例

72歳・月50万円なら本人負担は約2.5万円。東京都・協会けんぽ・令和8年度の額表で、60歳の場合と比べる。

具体的な金額で見てみます。社会保険料とは、健康保険料や厚生年金保険料など、社会保険のために会社と本人が納めるお金の総称です。前提は令和8年度・東京都・協会けんぽ・社長72歳、役員報酬は月50万円とします。報酬月額48万5千円以上51万5千円未満は、標準報酬月額50万円の等級に入ります。標準報酬月額は、月々の報酬を幅で区切った保険料計算用の金額のことです。

協会けんぽ「令和8年度保険料額表(東京支部)」の折半額。2026年10月11日確認
内訳 料率(労使合計) 本人負担 会社負担
健康保険料 9.85% 24,625円 24,625円
子ども・子育て支援金 0.23% 575円 575円
介護保険料 (65歳以上は対象外) なし なし
厚生年金保険料 (70歳以上は対象外) なし なし
合計 25,200円 25,200円

同じ月50万円の報酬でも、社長が60歳なら事情が変わります。健康保険料に介護保険料が加わって折半額は28,675円、子ども・子育て支援金575円、厚生年金保険料45,750円で、本人負担だけで月75,000円です。72歳の社長と比べると、本人負担・会社負担ともに月5万円近い差になります。

役員報酬月50万円の本人負担(月額):60歳と72歳
役員報酬月50万円の本人負担(月額):60歳と72歳

この差を見て「70歳を過ぎれば社会保険料が軽い」と言うことはできますが、それを理由に報酬の額を決めるのは順番が逆です。役員報酬の決め方や税金との関係は「節税・会社員の会社設立」のテーマの担当なので、ここでは触れません。保険料の計算手順そのものは社会保険料はいくら?計算にまとめています。

令和8年度保険料額表(東京支部)PDF|協会けんぽ全国健康保険協会(協会けんぽ)/確認日 2026年10月11日

厚生年金に入らなくても、在職老齢年金の調整は続く

保険料はなくても、年金は調整される。令和8年度の支給停止調整額は65万円。報酬と年金の合計で判断する。

社会保険料より気になるのは、年金のほうかもしれません。日本年金機構は、平成19年4月以降に70歳に達した人が70歳以降も厚生年金の適用事業所に勤務している場合、厚生年金保険の被保険者ではないものの、在職による支給停止が行われると説明しています。会社設立をして役員報酬を受ける社長も、この対象になり得ます。

判断のしかたは、老齢厚生年金の基本月額(報酬比例部分の月額)と総報酬月額相当額(月の報酬と、直近1年の賞与を12で割った額の合計)を足し、令和8年度の支給停止調整額65万円と比べるというものです。70歳以上の人の場合、計算に使うのは「標準報酬月額に相当する額」です。合計が65万円以下なら全額支給、超えた分の半分が年金から止まります。

日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」の式に当てはめた例。令和8年度の支給停止調整額65万円。2026年10月11日確認
72歳の社長の例 基本月額 総報酬月額相当額 合計 止まる額(月)
報酬月50万円・賞与なし 10万円 50万円 60万円 なし(全額支給)
報酬月62万円・賞与なし 10万円 62万円 72万円 (72万−65万)÷2=3.5万円

この基準額は、令和8年4月に月51万円から65万円へ引き上げられたばかりです。以前の基準で調整を受けていた社長は、同じ報酬でも止まる額が減っている可能性があります。年金をもらいながら役員報酬を受けるときの全体像は在職老齢年金と年金をもらいながらの会社設立で整理しています。

注意

基本月額や総報酬月額相当額は、人によって中身が違います。自分の数字は、ねんきん定期便や年金事務所で確かめてから当てはめてください。

在職老齢年金の計算方法|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日

受給資格が足りない社長には、高齢任意加入という道もある

受給資格が足りなければ、70歳以降も加入できる。高齢任意加入は、老齢年金の受給資格を満たしていない人のための仕組み。

ここまで「70歳以上は厚生年金の被保険者にならない」と書いてきましたが、例外もあります。厚生年金の適用事業所で働く70歳以上の人で、老齢年金の受給資格を満たしていない人は、本人の申出によって任意で厚生年金保険に加入できます。これを高齢任意加入といいます。

気になる負担の分け方は、事業主が同意すれば一般の被保険者と同じく会社と本人の折半になり、会社が納めます。事業主の同意が得られなければ、全額を本人が負担し、本人が納めることになります。社長自身が会社を経営している場合、事業主として同意するかどうかも自分で決めることになるので、会社の資金計画とあわせて考える必要があります。

事業主が同意する

会社と本人で保険料を折半。納付義務者は会社。滞納すれば一般の保険料と同じく滞納処分の対象。

事業主が同意しない

本人が保険料を全額負担。納付義務者は本人。督促の期限までに納めないと資格を失う。

会社員として長く働いてきた人なら受給資格はたいてい満たしているので、この制度を使う場面は多くありません。海外で長く暮らしていた人や、自営業の期間が長く国民年金の納付が途切れていた人は、会社設立の前に一度、年金事務所で加入記録を確かめておくと安心です。

70歳以上の方が厚生年金保険に加入するとき(高齢任意加入)の手続き|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日

健康保険の切り替えと家族の扶養:国保・任意継続から移るとき

国保は自分で抜け、配偶者の扶養も見直す。会社の健康保険に加入したら、元の保険の脱退と被扶養者の届出を確かめる。

高齢になってから会社設立をする人の多くは、それまで国民健康保険に加入しています。会社の健康保険に加入したら、国民健康保険は自分で脱退の届出をしなければなりません。世田谷区の案内でも、国保の脱退は自動では行われず、職場の健康保険に加入したら14日以内に届け出るよう求めています。届け出ないと、両方の保険料を負担する期間が生じかねません。

会社員を辞めてすぐに会社をつくった場合は、任意継続(退職前の健康保険を最長2年続ける制度)を選んでいるかもしれません。会社の健康保険の被保険者になると、任意継続の資格はなくなります。どちらを選ぶかの比べ方は任意継続と国民健康保険の比較で扱っています。加入先は通常、協会けんぽです。業種の健康保険組合に入れる場合の違いは協会けんぽと健康保険組合を見てください。

配偶者を被扶養者にできるかも確かめておきます。被扶養者とは、被保険者に生計を維持されていて、自分では保険料を払わずに健康保険を使える家族のことです。認定の目安は年間収入130万円未満で、60歳以上の人は180万円未満、同居なら被保険者の収入の半分未満といった条件があります。70歳前後の夫婦なら、配偶者の年金収入が180万円未満かどうかがひとつの目安です。75歳以上の配偶者は後期高齢者医療に移るので、被扶養者にはなりません。

扶養の条件の詳しい当てはめ方は扶養・家族のカテゴリーで確かめられます。

従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日

まとめ:70歳以上の会社設立は「健康保険だけ・届出あり・年金は調整あり」

3つの線と、届出と、年金の調整。厚生年金は70歳未満、健康保険は75歳まで。保険料がなくても届出は要る。

最後に、70歳以上の社長が会社設立をしたときの社会保険を並べ直します。厚生年金保険は70歳未満が被保険者なので加入せず、健康保険だけに加入します。75歳以上なら健康保険も外れますが、新規適用届と70歳以上被用者該当届は必要になり得ます。そして、厚生年金の被保険者でなくても在職老齢年金の調整は続きます。

  1. 1
    年齢の帯を確かめる
    65〜69歳は健康保険と厚生年金、70〜74歳は健康保険だけ、75歳以上は後期高齢者医療
  2. 2
    届出の要否を確かめる
    保険料がかからない年齢でも、会社設立をしたら年金事務所への届出の対象になり得る
  3. 3
    保険料を見積もる
    東京都・令和8年度・月50万円なら、72歳の本人負担は月25,200円
  4. 4
    年金の調整を試算する
    基本月額+総報酬月額相当額が65万円を超えるかどうか
  5. 5
    元の健康保険を整理する
    国保は14日以内に脱退の届出。配偶者の扶養も見直す

社長1人の会社でそもそも社会保険に加入するのかという基本は、社長1人の会社の加入義務と社長1人の会社でも社会保険に加入する?にまとめています。年齢の線は単純でも、年金の受け取り方や家族の状況で答えは変わります。最後は年金事務所で、自分の記録と報酬の予定を伝えて確かめてください。

全国の相談・手続き窓口|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日

最後に、読んでくださったあなたへ

70歳を過ぎてからの会社設立は、珍しいことではなくなりました。健康保険だけの加入になる、保険料がなくても届出は要る、年金の調整は続く。この3つを知っておけば、社会保険で慌てることはぐっと減ります。役員報酬の額を決める前に、この記事の表で自分の年齢の帯と年金の数字を当てはめ、迷うところは年金事務所か社会保険労務士に確かめてから動いてください。

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