会社設立の社会保険料は都道府県でいくら違う?令和8年度の額表で役員報酬30万円を比べる
この記事の目次(8項目)
東京以外の地域で会社を設立した、あるいは自宅と会社の所在地が別の都道府県になる社長に向けた記事です。ネットで見つけた「東京都の計算例」をそのまま自分に当てはめてよいのか、差がどのくらいあるのかを、令和8年度の都道府県別の額表で確かめたい方を想定しています。
健康保険料率は「住所」ではなく「会社の所在地」で決まる

会社設立をした社長が社会保険料を調べると、検索結果の計算例はたいてい東京都の数字です。ところが、協会けんぽ(全国健康保険協会)の健康保険料率は都道府県ごとに違います。まず押さえたいのは、その「都道府県」が何を指すかです。
健康保険法第160条は、協会けんぽの保険料率を「支部被保険者」を単位に決めると定め、支部被保険者を「各支部の都道府県に所在する適用事業所に使用される被保険者」としています。適用事業所は社会保険の加入が義務づけられた事業所、被保険者は保険に加入している本人のことです。つまり、社長が住んでいる県ではなく、会社(事業所)がある県の率が使われます。
協会けんぽの令和8年度の案内ページにも、加入支部は資格情報のお知らせ等の「全国健康保険協会 〇〇支部」で確かめられ、居住する都道府県とは異なる場合がある、と書かれています。埼玉県に住んで東京都の会社に通う社長なら、東京支部の率です。
ここがポイント
ここでいう社会保険は健康保険と厚生年金保険(40〜64歳は介護保険を含む)。そのうち都道府県で率が変わるのは健康保険料だけです。
注意
退職後に任意継続被保険者になっている人は扱いが違い、住所または居所のある都道府県の率が使われます(同じく第160条)。会社設立前に任意継続を使っている人は、この違いに気をつけてください。
健康保険法 第160条(協会けんぽの保険料率)|e-Gov法令検索e-Gov法令検索(デジタル庁)/確認日 2026年10月11日
令和8年度の都道府県別の健康保険料率:最高は佐賀、最低は新潟

令和8年度の協会けんぽの健康保険料率は、令和8年3月分(4月納付分)から適用されています。47都道府県の率を並べると、最も高いのは佐賀県の10.55%、最も低いのは新潟県の9.21%でした。前年度から40都道府県で引き下げ、青森・秋田・山形・栃木・神奈川・島根・沖縄の7県が据え置きで、引き上げはありません。
| 都道府県 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 北海道 | 10.31% | 10.28% |
| 東京都 | 9.91% | 9.85% |
| 神奈川県 | 9.92% | 9.92% |
| 新潟県 | 9.55% | 9.21% |
| 愛知県 | 10.03% | 9.93% |
| 大阪府 | 10.24% | 10.13% |
| 福岡県 | 10.31% | 10.11% |
| 佐賀県 | 10.78% | 10.55% |
この率は、協会けんぽが勝手に好きな数字を付けているわけではありません。健康保険法第160条は、協会けんぽの一般保険料率を千分の三十から千分の百三十までの範囲で、支部被保険者を単位として決めると定めています。毎年度、支部ごとの医療費などをもとに見直され、そのたびに額表が作り直されます。
全国平均は9.9%で、協会けんぽは令和8年度に平均保険料率を0.1%引き下げたと説明しています。率の差は医療費の水準などを反映したもので、どの県が有利・不利という話ではありません。会社設立の場所を保険料率で選ぶ人はまずいないはずなので、自分の県の率を正しく使うことに集中しましょう。

令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます|協会けんぽ全国健康保険協会(協会けんぽ)/確認日 2026年10月11日
役員報酬30万円で比べると、本人負担の差は月いくら?

率だけ眺めても実感がわかないので、金額にします。前提は令和8年度・協会けんぽ・40歳未満・役員報酬月30万円(標準報酬月額30万円)。各支部の額表で、標準報酬月額30万円の行の折半額を拾いました。
| 都道府県 | 健康保険料(本人) | 本人負担の合計 | 会社負担の合計 |
|---|---|---|---|
| 新潟県 | 13,815円 | 41,610円 | 42,690円 |
| 東京都 | 14,775円 | 42,570円 | 43,650円 |
| 神奈川県 | 14,880円 | 42,675円 | 43,755円 |
| 愛知県 | 14,895円 | 42,690円 | 43,770円 |
| 福岡県 | 15,165円 | 42,960円 | 44,040円 |
| 大阪府 | 15,195円 | 42,990円 | 44,070円 |
| 北海道 | 15,420円 | 43,215円 | 44,295円 |
| 佐賀県 | 15,825円 | 43,620円 | 44,700円 |
最も高い佐賀県と最も低い新潟県で、本人負担の差は月2,010円です。会社負担も同じだけ違うので、会社と本人を合わせると月4,020円、1年で48,240円の差になります。一方、東京都と神奈川県・愛知県の差は月100円前後で、数字の上ではほとんど誤差の範囲です。
- 東京の計算例と自分の県の額表、どちらで資金計画を作ればいい?
- 最終的には自分の県の額表です。会社設立前のざっくりした見積もりなら東京の例でも大きくは外れませんが、毎月の給与計算や社会保険料の納付額は、加入している支部の額表どおりに決まります。
- 会社と社長の自宅が別の県だと、社会保険の手続きも2か所になる?
- 健康保険・厚生年金保険の加入は会社(事業所)単位で行うので、手続きの相手は会社の所在地を管轄する年金事務所です。社長の自宅の県が関係してくるのは、国民健康保険をやめる届出など市区町村の手続きのほうです。
差がこの程度に収まるのは、社会保険料の中で一番大きい厚生年金保険料が全国共通だからです。月30万円の報酬なら、本人負担42,570円(東京都)のうち27,450円、6割以上が厚生年金保険料で占められています。
令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(佐賀支部)|全国健康保険協会全国健康保険協会(協会けんぽ)/確認日 2026年10月11日
福岡で会社設立をした38歳の社長の場合

1人のケースに絞って見てみます。38歳・福岡市で合同会社を設立・協会けんぽ・役員報酬は月30万円の社長です。会社設立と同時に役員報酬を出し始め、社会保険に加入したとします。
| 内訳 | 38歳(40歳未満) | 40歳以降(介護保険あり) |
|---|---|---|
| 健康保険料(介護分を含む) | 15,165円 | 17,595円 |
| 子ども・子育て支援金 | 345円 | 345円 |
| 厚生年金保険料 | 27,450円 | 27,450円 |
| 本人負担の合計 | 42,960円 | 45,390円 |
| 会社負担の合計(拠出金1,080円を含む) | 44,040円 | 46,470円 |
東京都の同じ条件(本人負担42,570円)と比べると、福岡の社長は本人負担が月390円、年間で4,680円多くなります。会社負担も同じ額だけ多いので、社長1人の会社全体では年9,360円の差です。ネットの東京の計算例を使って資金計画を作っても大きく外れはしませんが、正確な額を出すなら自分の支部の額表に差し替えるのが確実です。
1年分に直すと、本人負担が515,520円、会社負担が528,480円で、合わせて1,044,000円です。社長1人の合同会社では、この約104万円がまるごと会社のお金から出ていくと考えて、売上の見込みと並べておく必要があります。役員報酬を月30万円にした時点で、会社としては報酬360万円に加えて社会保険料の会社負担約53万円を毎年用意する計算になります。
この社長が40歳になると、健康保険の欄が介護保険料込みの17,595円に変わり、本人負担は45,390円になります。介護保険料率1.62%は全国共通なので、40歳になったことで増える額(月2,430円)は東京でも福岡でも同じです。
令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(福岡支部)|全国健康保険協会全国健康保険協会(協会けんぽ)/確認日 2026年10月11日
全国どこでも同じ部分:厚生年金・介護・支援金・拠出金

都道府県の違いを気にする前に、変わらない部分を確かめておくと見通しがよくなります。令和8年度の社会保険料のうち、全国で同じ率なのは次の4つです。

子ども・子育て支援金は2026年度に始まった仕組みで、こども家庭庁は、被用者保険の支援金率を0.23%とし、その半分は企業が負担すると説明しています。令和8年4月分の保険料から加わり、給与からの天引きは5月からです。会社設立の時期が2026年4月より前だった人は、途中で本人負担・会社負担がそれぞれ少し増えたことになります。
厚生年金保険料と拠出金は日本年金機構の額表でも同じ数字が確かめられます。厚生年金保険の加入先は全国で1つなので、会社設立の場所で率が変わることはありません。
反対に、健康保険料は加入先によって率そのものが違います。協会けんぽではなく健康保険組合に加入する会社は、組合が決めた料率で計算するので、この記事の都道府県別の表は使えません。加入先の選び方は協会けんぽと健康保険組合、70歳以降の厚生年金の扱いは厚生年金と70歳の社長にまとめています。
保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月11日
本店と支店が別の県、自宅と会社が別の県のとき

会社設立のあとで、県をまたぐ状況はいくつか考えられます。代表的な3つの場面で、どの率を使うかを整理しました。
| 場面 | 使う健康保険料率 |
|---|---|
| 社長は千葉県に住み、会社は東京都 | 東京支部の率(9.85%) |
| 東京の本店のほかに大阪に支店を出し、大阪で従業員を雇った | 大阪の支店が別の適用事業所なら、そこで働く人は大阪支部の率(10.13%) |
| 本店を神奈川県から東京都へ移した | 移転後は東京支部の率に切り替わる |
いちばんよくあるのは1つ目の、社長の自宅と会社が別の県という形です。自宅をそのまま本店にして会社設立をした人なら県が一致しますが、都心にオフィスを借りて登記した人は、住まいと会社の所在地がずれることが珍しくありません。その場合でも、健康保険料の計算に使うのは会社側の県の率です。
2つ目の支店のケースは、支店が単独で社会保険の適用事業所になっているかどうかで変わります。本店でまとめて手続きしている場合の扱いや、切り替わる月がいつになるかは、管轄の年金事務所に確かめてください。本店移転の届出の書き方は「会社設立後の手続き」のテーマの担当です。
もう1つ、複数の会社の役員を兼ねている社長は、会社ごとに報酬を合算して標準報酬月額を決める仕組みがあります。県の違う会社を兼務している場合は、どの支部の率になるかも含めて二以上事業所勤務で確かめてください。
令和8年度保険料額表|都道府県毎の保険料額表|協会けんぽ全国健康保険協会(協会けんぽ)/確認日 2026年10月11日
料率は毎年3月分から変わる:見積もりを更新するタイミング

都道府県別の健康保険料率は、毎年度見直されます。令和8年度は3月分(4月納付分)から新しい率になり、任意継続被保険者は4月分から切り替わりました。支援金はさらに1か月遅れて4月分(5月納付分)からの開始です。

秋に会社設立をした場合、半年もしないうちに率が変わります。年間の社会保険料を見積もるときは、3月分以降は翌年度の率になることを念頭に置き、公表されたら額表を差し替えてください。計算の手順は社会保険料の計算手順と報酬別の早見表で、東京都の数字を使って一通り追っています。
令和8年度保険料率のお知らせ|全国健康保険協会全国健康保険協会(協会けんぽ)/確認日 2026年10月11日
まとめ:自分の支部の額表で、社会保険料を出し直す

会社設立後の社会保険料のうち、都道府県で変わるのは健康保険料だけです。使う率は社長の住所ではなく会社の所在地で決まり、令和8年度は佐賀県10.55%から新潟県9.21%まで幅があります。役員報酬30万円・40歳未満なら、本人負担の差は最大で月2,010円でした。
- 協会けんぽの「都道府県毎の保険料額表」から、会社の所在地の支部のPDFを開く
- 40歳未満なら介護なしの列、40〜64歳なら介護ありの列を使う
- 厚生年金保険料・支援金・拠出金は全国共通の数字をそのまま使う
- 毎年3月分から率が変わるので、年度ごとに額表を取り直す
都道府県の差は、社会保険料全体から見れば小さな部分です。それよりも影響が大きいのは、役員報酬がどの標準報酬月額の等級に入るか、そして社長が40歳以上かどうかです。報酬額と等級の関係は役員報酬と標準報酬月額、会社と本人の負担の分け方は会社負担と本人負担で扱っています。
会社をつくったばかりで、まだ社会保険に加入するかどうかの整理がついていない人は、社長1人の会社の加入義務を先に読んでおくと、どの数字が自分に関係するのかがはっきりします。
令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(新潟支部)|全国健康保険協会全国健康保険協会(協会けんぽ)/確認日 2026年10月11日
最後に、読んでくださったあなたへ
東京の計算例をそのまま信じてよいのか、という疑問は、地方で会社設立をした社長ならいちど抱くものです。答えは「大きくは外れないが、正確には自分の県の額表で出し直す」。協会けんぽのサイトから自社の支部のPDFを1枚取り寄せて、自分の報酬の行に印をつけてみてください。支店を出す、本店を移すといった県をまたぐ動きがあるときは、早めに年金事務所や社会保険労務士に、どの支部の率になるかを確かめておくと安心です。
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