会社設立 社会保険 労働保険の違いと加入の順番|社長1人と従業員ありで分けて整理
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会社設立をしたあとで「社会保険と労働保険、どちらを先に、どこまで入ればいいのか」と迷っている社長に向けた記事です。いまは社長1人でも、数か月以内に最初の従業員を迎える予定の方が、2つの制度の境目と手続きの順番を一度に見渡せるように書いています。
会社設立の社会保険と労働保険は別の制度:言葉の範囲をそろえる

法人をつくる手続きを調べ始めると、「社会保険」という言葉が記事によって違う意味で使われていて戸惑います。広い意味では労災保険や雇用保険まで含めて呼ぶ解説もありますが、このサイトでは範囲を固定します。社会保険は健康保険と厚生年金保険(40〜64歳は介護保険も加わります)、労働保険は労災保険と雇用保険です。この記事の最後まで、この2つを混ぜません。
もう一つの違いは「入口」です。社会保険は、法人であれば社長1人でも適用事業所(社会保険の加入が義務づけられた事業所)になります。日本年金機構は、新規適用の対象として「常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用する法人事業所」を挙げています。一方の労働保険は、労働者を使用する事業が対象で、社長だけの会社ではそもそも出番がありません。
| 区分 | 中身 | 社長1人の会社 | 従業員を雇った会社 |
|---|---|---|---|
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金保険 | 役員報酬があれば社長が加入 | 従業員も条件に応じて加入 |
| 労働保険 | 労災保険・雇用保険 | 原則として対象にならない | 労働者を雇った日から始まる |
設立した直後は、年金事務所・労働基準監督署・ハローワークと窓口が分かれるため、「全部まとめて社会保険」と思い込むと抜けが出ます。以下の節で、制度ごとに誰が入るのかを順に切り分けていきます。
事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
労災保険は「労働者」を守る保険:労災の対象になる人とならない人

労災保険は、仕事中や通勤中のけが・病気・死亡に対して給付を行う保険です。厚生労働省の労働局の案内では、常用、日雇、パート、アルバイトといった名称や雇用形態にかかわらず、労働の対価として賃金を受けるすべての労働者が対象とされています。正社員の採用予定がなく、アルバイトを1人だけ雇う場合でも、労災の対象になる点は押さえておきたいところです。
反対に、株式会社の代表取締役や、定款・取締役会の決定による業務執行取締役、監査役は、労働者ではないため対象になりません。社長が現場で作業をして転んだとしても、労災保険からは支払われない、ということです。この空白を埋める仕組みとして、中小事業主などの特別加入があります。
特別加入は、労働者以外の人のうち、業務の実情や災害の発生状況から労働者に準じて保護するのが適当な人に、任意加入を認める制度です。静岡労働局の案内では、雇用する労働者について労働保険関係が成立していることと、労働保険事務の処理を労働保険事務組合に委託していることの2つが要件とされています。従業員を一人も雇わない会社設立直後には、この道は通れません。
労災保険の特別加入制度|静岡労働局(厚生労働省)厚生労働省 静岡労働局/確認日 2026年10月23日
雇用保険の加入条件:週20時間・31日以上が一つの目安

雇用保険は、失業したときの給付や、教育訓練・育児休業に関する給付などを担う制度です。ハローワークの説明では、政府が管掌する強制保険制度で、労働者を雇用する事業は原則として強制的に適用されます。事業所が適用事業になったあと、働く人が被保険者になるかどうかは、勤務の実態で判定されます。
労働局の案内によれば、1週間の所定労働時間が20時間以上で、同一の事業主に引き続き31日以上の雇用見込みがあれば、一定の例外を除いて原則として雇用保険の被保険者になります。たとえば、週3日・1日4時間のパートさんなら週12時間で、この要件には届きません。週5日・1日5時間なら週25時間で、雇用期間の見込みが31日以上であれば対象です。

社会保険のパート判定(4分の3基準や、週20時間以上の短時間労働者の要件)と数字が似ているため、混同しやすい箇所です。パート・アルバイトの社会保険の判定は会社設立 社会保険 加入の早見表で別に確かめられます。雇用保険はあくまで労働保険の側の物差しです。たとえば、週25時間働くパートさんは、雇用保険の要件(週20時間以上)を満たしていても、社会保険の側では勤務先の規模や所定労働日数によって加入の有無が分かれます。同じ人でも、2つの制度で答えが一致するとは限りません。
雇用保険の被保険者|愛媛労働局(厚生労働省)厚生労働省 愛媛労働局/確認日 2026年10月23日
社会保険と労働保険の違いを、窓口・負担・守る範囲で並べる

ここまでの話を、横に並べて見比べます。窓口は、社会保険が年金事務所、労働保険が労働基準監督署とハローワークです。保険料の負担も違います。厚生労働省の説明では、労災保険分は全額事業主の負担で、雇用保険分は事業主と労働者の双方が負担します。社会保険のほうは、健康保険・厚生年金保険とも、労使で折半するのが原則です。

金額の感覚も、前提を置いて見ておきましょう。令和8年度の雇用保険料率は、一般の事業で労働者5/1,000、事業主8.5/1,000、合計13.5/1,000です。月給25万円の従業員なら、本人負担の雇用保険料は1,250円、事業主負担は2,125円という計算になります。労災保険料は従業員の負担がなく、率は事業の種類ごとに異なるため、ここでは金額を出しません。
社長の側から見ると、役員報酬にかかるのは社会保険料です。たとえば令和8年度・東京都・協会けんぽ・45歳で標準報酬月額が30万円なら、本人負担は健康保険14,775円・介護保険2,430円・子ども・子育て支援金345円・厚生年金保険27,450円で、合わせて月45,000円です。労働保険料はここに含まれません。社会保険料の計算は会社設立 社会保険 いくらで詳しく見られます。
2つの違いを丸ごと比べた記事は会社設立後の社会保険と労働保険の違いにあります。この節は要点だけに絞っているので、制度の細部が気になったら子記事のほうで確かめてください。
令和8年度の雇用保険料率について|山形労働局(厚生労働省)厚生労働省 山形労働局/確認日 2026年10月23日
社長・役員・家族は労働保険に入れる?立場ごとの境目

「社長も雇用保険に入っておけば、廃業したときに失業給付がもらえる」という話を聞くことがあります。労働局の案内では、事業主や社長、会長は雇用保険の被保険者になりません。取締役も原則として被保険者としませんが、部長や支店長、工場長のように従業員の実態があり、報酬の面から見ても労働者的な性格が強いと認められる兼務役員は例外です。賃金として支払われる額が役員報酬より多いことや、就業規則が一般の労働者と同じように適用されていることなどが見られます。
家族はどうでしょうか。労災の案内では、同居の親族は原則として「労働者」に当たりません。雇用保険も、事業主と同居している親族は原則として被保険者になりません。ただし、同居の親族以外の労働者を常時使用する事業で、一般事務や現場作業に従事し、他の労働者と同じ条件で賃金を受けているなど、一定の要件を満たす場合は労働者として扱われる道があります。

ここで気をつけたいのは、労働保険の対象外であることと、社会保険の対象であることは別だという点です。報酬を受ける役員は社会保険の被保険者になります。立場ごとの整理は社長・役員・家族は労働保険の対象外?で、さらに細かい場合分けを載せています。役員報酬のゼロ・あり別の社会保険の扱いは会社設立 社会保険 役員報酬にまとめました。
労災保険の適用者について|愛媛労働局(厚生労働省)厚生労働省 愛媛労働局/確認日 2026年10月23日
従業員を雇ったら:会社設立から労働保険が始まるまでの順番

社長1人で会社設立を済ませた人が、最初のスタッフを迎える日。この日が、労働保険の起点になります。厚生労働省の案内では、適用事業の事業主は、保険関係成立の日(事業開始の日、または適用事業に該当することとなった日)から10日以内に、保険関係成立届を所轄の労働基準監督署か公共職業安定所へ出す必要があります。
続けて、その年度分の労働保険料を概算で申告・納付します。この概算保険料申告書の期限は、保険関係成立の日の翌日から起算して50日以内です。雇用保険の適用事業となった場合は、雇用保険適用事業所設置届と、雇用保険被保険者資格取得届もハローワークに出します。順番としては、労働基準監督署で保険関係成立届を受け付けてもらい、その後でハローワークへ進む形になります。

書類の種類、記入の方法、提出先ごとの添付書類といった細部は、「会社設立後の手続き」のテーマのテーマで扱う内容です。この記事では、いつ・どの窓口で何を出すのかという骨組みに絞ります。社会保険側の届出をどう進めるかは会社設立 社会保険 手続きで見られます。
労働保険の成立手続|厚生労働省厚生労働省/確認日 2026年10月23日
労働保険料は毎年の年度更新で精算する:社会保険料との払い方の違い

保険料の払い方も、2つの制度で大きく違います。社会保険料は、毎月の標準報酬月額に応じて計算し、納付対象月の翌月末日までに納めます。たとえば4月分の保険料は5月末日が期限です。これに対して労働保険料は、年度の初めに概算で申告・納付し、翌年度の初めに確定申告をして精算する仕組みです。
この年度当初の手続きを「年度更新」と呼び、厚生労働省の案内では、原則として例年6月1日から7月10日までの間に行います。労働保険料は、労働者に支払う賃金の総額に、保険料率(労災保険率+雇用保険率)を掛けて求めます。賃金総額が見込みより増えれば精算で追加の負担が、減れば還付や充当が生じます。
社会保険料
毎月の標準報酬月額から計算。翌月末日が納期限。算定基礎届で、毎年9月から標準報酬月額が見直される。
労働保険料
賃金総額から計算。年度当初に概算で払い、翌年度に確定申告で精算。年度更新は例年6月1日〜7月10日。
1年目は、この2つの納付スケジュールが別々に走り出します。月々の資金繰りに社会保険料、初夏のまとまった時期に労働保険料、という見通しを立てておくと、慌てずに済みます。社会保険料の納付と口座振替の考え方は会社設立 社会保険 支払いに詳しくあります。
労働保険料の申告・納付|厚生労働省厚生労働省/確認日 2026年10月23日
届出と窓口:社会保険は5日以内、労働保険は10日以内を軸に覚える

ここまでの内容を、窓口と期限の組み合わせに直します。社会保険の新規適用届は、日本年金機構の案内で「事実発生から5日以内」、提出先は事務センターか管轄の年金事務所とされています。労働保険の保険関係成立届は10日以内で、窓口が労働基準監督署です。数字が5と10で並んでいるので、「年金は5、労働は10」と覚えておくと引き出しやすくなります。

書類の作成や提出の代行を他人に頼む場合、有償で行えるのは社会保険労務士に限られます。このサイトは書類を作成したり代行したりする立場ではないので、実際の届出は自分で行うか、社会保険労務士に依頼するかを選ぶことになります。判断材料は会社設立 社会保険 自分でで扱っています。
迷いやすいのは、従業員がいない期間が長い会社です。この場合、労働保険の届出は必要になるまで待てますが、社会保険の側は報酬を払い始めた時点で手続きが動きます。最初の従業員を迎える日と、役員報酬の開始日は、別々に確認してください。
新規適用の手続き|日本年金機構日本年金機構/確認日 2026年10月23日
まとめ:会社設立の社会保険と労働保険は、社長1人か従業員ありかで当てはめる

社会保険は健康保険と厚生年金保険、労働保険は労災保険と雇用保険。この区切りを最初に決めておくと、会社設立の後の手続きがぐっと整理されます。法人であれば、社長1人でも役員報酬が出ていれば社会保険に加入するのが原則です。労働保険は、労働者を雇った日からが出番で、社長自身は労災・雇用保険のどちらにも入りません。
従業員を雇うときは、労働保険の成立(10日以内)、雇用保険の設置届、そして対象者の社会保険の資格取得(5日以内)が重なります。最初の1人の採用は、つい人事の喜びだけで進めがちですが、日程を一度カレンダーに書き出しておくと、抜けが出にくくなります。本人の働く時間や雇用の見込みで、雇用保険と社会保険の加入が分かれることも忘れずに。
- 社長1人:役員報酬があれば社会保険に加入。労働保険は原則として対象外
- 最初の従業員:保険関係成立届は10日以内、社会保険の資格取得は5日以内
- 保険料:社会保険は毎月(翌月末日)、労働保険は年度更新(例年6月1日〜7月10日)
- 届出の書き方:「会社設立後の手続き」のテーマのテーマで確認
制度は改正されます。ここに書いた期限・料率・要件は2026年10月23日時点のもので、最新の内容は日本年金機構・厚生労働省・所轄の労働基準監督署やハローワークでご確認ください。社会保険全体の加入の入口は会社設立 社会保険 加入に、まとめてあります。
労働保険とは|厚生労働省厚生労働省/確認日 2026年10月23日
登記を終えたあとは、社会保険と労働保険という似た名前の制度が一度に目の前に現れます。けれど、誰が入るのか、誰が払うのか、どの窓口へ行くのかを並べてみると、2つはまったく別の箱だと分かります。社長1人の今と、従業員を迎える先の日、2つの場面に分けて、この記事の表と日程の図を手元に置いてみてください。不安が残るところは、所轄の機関や社会保険労務士に、この記事の条件をそのまま伝えて相談するのが近道です。